展覧会レポート
2020.1.22
浮世絵最大の派閥「歌川派」を継承した絵師たちを紹介
英朋の幻の日本画「焼あと」も初公開!
知られざる「歌川派」のもうひとつの系譜を紹介する展覧会が、弥生美術館で開催中です。
展示風景
歌川豊春から始まる浮世絵界最大の派閥「歌川派」。妖怪絵で有名な歌川国芳や、衝撃的な無残絵の描き手として知られる月岡芳年、また美人画の名手・鏑木清方など華やかな系譜で知られています。
本展では、「もうひとつの歌川派」ともいえる、右田年英(みぎたとしひで)、鰭崎英朋(ひれざきえいほう)、神保朋世(じんぼともよ)の作品を中心に紹介。また、生誕140年を迎える英朋の幻の日本画「焼あと」も初公開されます。
英朋の師匠「右田年英」は人格者!
年英は、明治〜大正にかけて活躍した浮世絵師です。とても温厚な人柄だったため弟子も多く、時に厳しく愛情を持って情熱的に弟子の育成に取り組んだ人物です。
(左から)右田年英《三升合姿・八重垣姫》明治26年(1893)頃 個人蔵/右田年英《三升合姿・光秀》明治26年(1893) 個人蔵
年英は、九代目市川團十郎(くだいめ いちかわ だんじゅうろう)の役者絵を数多く手がけました。
本作は、歌舞伎の演目である「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」を描いたもの。八重垣姫(やえがきひめ)が、婚約者の武田勝頼の命を救うため、諏訪明神の白狐の力を借りて、凍った諏訪湖を渡るというファンタジー作品です。
鰭崎英朋の幻の日本画作品「焼あと」を初公開!
初公開となる英朋の幻の日本画作品「焼あと」。本作は、英朋の大親友だった伊東英泰(いとうえいたい)の遺族宅で、長年大切に保管されていました。
(左から)鰭崎英朋《焼あと》明治38年(1905) 真鶴磯料理 岩忠蔵 /伊東英泰《三浦義明》明治30年(1897) 真鶴磯料理 岩忠蔵
火事の多かった明治時代の東京を舞台とした本作。火事見舞いに訪れた若い娘が描かれています。娘の視線の先には、火事にあった家の住人の消息を記した立て札が。なんと書かれているのか、想像をかき立てる作品です。
ちなみに、英朋が祖母から受け継いだ珍しい姓「鰭崎」は、昔、先祖が源頼朝をもてなしたところ、頼朝の喉に魚の骨が刺さったことに由来すると言われています。ユニークな名付け方にびっくりですね!
平成まで歌川派を引き継いだ、神保朋世
神保朋世は鰭崎英朋の弟子に当たる人物です。代表作は、『オール読物』に長期連載されていた野村胡堂の「銭形平次捕物控(とりものひかえ)」で、昭和8年(1933)10月の第22話から挿絵を担当していました。
「銭形平次捕物控」展示風景
「銭形平次捕物控」は『オール読物』の創刊に際し、胡堂が執筆を依頼され書き始めた、連載読み切りの作品です。
朋世は日本画に専念する意思を固め、昭和15年(1940)に各雑誌・新聞社宛に一切の挿絵の仕事を断る文書を送りました。その際、「銭形平次捕物控」の挿絵も昭和16年(1941)6月で退きました。
しかし、戦後、読者と出版社の熱い要望により、昭和24年(1949)7月に再び「銭形平次捕物控」の挿絵を書くことに。昭和32年(1957)8月、最終話「鉄砲の音」まで、挿絵を書き続けました。
浮世絵から挿絵へ。歌川派を継承している誇りを胸に抱き、挿絵の世界で活躍した3人の画家たちにも注目した本展。展示室内を埋め尽くす作品は圧巻です。
各展示室の中央に置かれているケースにも、作品がびっちり!一日中楽しめます。
information
会場名:弥生美術館
展覧会名:もうひとつの歌川派?! 国芳・芳年・年英・英朋・朋世~浮世絵から挿絵へ……歌川派を継承した誇り高き絵師たち
会期:2020.01.07〜03.29
開館時間:10:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし、2/24は開館)、2/25(火)
料金:一 般 900円、大・高生 800円、中・小生 400 円
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/7639/
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は2月12日23:59まで!
★合わせて読みたい!
・「展覧会レポート」
太田記念美術館
「開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展―歌麿・北斎・応為」
Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】初公開の「焼あと」は、実物でみるとその大きさに驚きます。ぜひ足を運んでみてください!