Be-dan
2020.2.17
今月のBe-danは、東京都現代美術館にある、美術図書室の司書・岩田郁子さんにインタビュー! 2007年以来、同室の司書として活躍されているそうです。
第3回では、岩田さんがなぜ美術専門の図書館に興味を持ったのか、ご自身のキャリアや司書の仕事内容についてたっぷりお聞きします!
(第2回はコチラ)
―美術図書室での司書の1日の業務の流れを教えてください。
出勤すると、まず全員で書架を整頓する作業から始まり、コピー用紙を補充するなど開室の準備をします。美術館の開館と同時に開室すると、司書が1時間ずつ交代でカウンターに出て、利用者の応対をしていきます。
―カウンターでの利用者応対にはどんな業務があるんですか?
たとえば、閉架書庫にある資料を持ってきたり、資料複写の申し込み受付をしたりします。また、「レファレンス」といって、利用者からの調べものの相談に応えるのも司書の仕事です。
―カウンター業務に出ていない時間帯は何をしているんですか?
新着資料を利用者が閲覧できる状態にするための作業をすることが多いですね。具体的には、資料の目録データを作成して、インターネット蔵書検索サイトに公開し、書架に並べるまでの一連の作業を行います。また、新しく受け入れる資料の選定にも時間をかけていますよ。
司書カウンターの奥にある書庫。雑誌がタイトル順に並んでいます
―利用者が帰った閉室後に行う仕事などもあるんですか?
閉室後には、利用者の方が返本台に置いた本を書架に戻すなどして翌日に備えます。他にもたくさんの業務があり、私を含めて6人の司書がそれぞれ担当しています。
―岩田さんが主に担当していらっしゃる業務はどんな内容ですか?
私は主に貴重資料の整理を担当していて、入手した資料の詳細を調べたり、デジタル化してインターネット公開するための計画を立てたりしています。また当室では、他の美術館では収蔵作品として扱われているような貴重資料を多数所蔵していますので、他の美術館関係者や研究者の方による調査や画像使用の手続きも担当しています。
―研究者の対応などもあるんですね! 岩田さんはなぜ「美術専門」図書館の司書になろうと考えたんですか?そのきっかけや経緯を教えてください。
大学と大学院で芸術学を専攻していたのですが、研究のための文献を自分で整理しているうちに、司書の仕事に興味を持ちました。通っていた大学には司書課程がなかったので、他大学の講座で司書資格を取得したんです。社会人になってから、いくつか他館を経験したあとに、こちらで司書の募集があったときに、芸術の知識と司書資格を活かせると思い、応募しました。
―これまで学ばれた知識もバッチリ活かせているんですね! ずばり、司書のお仕事のやりがいはなんですか?
レファレンス業務で、質問者の方が希望されている答えが出せるとうれしいです。よくあるのは、昔行った展覧会の図録を見たいんだけど、どの美術館でやったのか、いつ開催されたのか忘れてしまった・・・といったあいまいな質問ですね。そんな時、どんな作品が展示されていましたか?など、詳細に聞き取りをすることによって、少しずつ回答に近づいていくんですが、最終的に質問者の方が求めていた図録をお見せできたときは、凄く達成感があります。
―若い方の中には、司書になりたい方も多いと思います。何かアドバイスをいただけますか?
図書室は、外国人を含め様々なお客さんと会話する機会が多いです。ですので、他業種でも良いので、お客さんとコミュニケーションが必要な対面業務を体験しておくとよいと思います。
―外国人もよく来室するんですね! 語学能力も必要ですか?
そうですね。外国人の利用者も1日数名程度来室されますし、海外の資料を収集しなければならないので、英語はできたほうがいいですね。また、資料のデジタル化に対応するために、ある程度のITリテラシーや著作権についての知識も不可欠になってきますよ!
司書のお仕事は、日々の業務にデジタル化などについての勉強など、とても忙しそう! 学んできた知識が活かせるのもやりがいがあって良いですね!
つづく最終回では、美術図書室の意外な楽しみ方をお聞きします。お楽しみに!
(第4回へ続く)
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。