展覧会レポート
2020.12.17
暁斎の下絵や素描などを紹介する展覧会
暁斎の生の筆づかいに注目です!
東京ステーションギャラリーにて、「河鍋暁斎の底力」が開催中です。
河鍋暁斎の底力 展示風景より
河鍋暁斎(かわなべ きょうさい/1831-1889)は、毎年のように展覧会が開かれる人気の絵師です。
狩野派の絵描きとしての土台を持つ暁斎は、真面目な仏画から笑いをさそう風刺画まで、あらゆるジャンルを描き尽したといいます。
本展では、暁斎の本画(*)を一切展示しないとのこと!
河鍋暁斎記念美術館の充実した収蔵品から厳選された素描や下絵、画稿、席画、絵手本など、暁斎の生の筆づかいが感じられる作品が紹介されます。
あえてメジャーな本画を展示しない、チャレンジングな展覧会です。
*本画:下絵を描き、彩色を施した完成品のこと。
アイディアを描き留めたスケッチブック
幼い頃から絵を好んだという暁斎。数え年7歳で浮世絵師の歌川国芳に一時入門、その後10歳で狩野派の絵師・前村洞和(まえむら とうわ)に入門し、駿河台狩野家当主・狩野洞白(かのう とうはく)のもとで、修行を終えました。
(手前)《紋画帖》1855-88(安政2-明治21)年 河鍋暁斎記念美術館蔵
(会期中、場面替え予定)
修行を終えた暁斎は、館林藩お抱え絵師・坪山洞山の養子となります。
あるとき絵画制作のため、福岡藩の霞ヶ関屋敷へ通っていた際、女中の尻を追いかけたとして養父・洞山に怒られてしまいます。しかし、暁斎は女中の帯の珍しい文様を写生したかっただけだったとか。
暁斎は若い頃から、帳面・・・現代でいう小さなスケッチブックを懐に忍ばせ、気になったモチーフを片っ端から模写していました。
暁斎の迫力ある筆づかい!
一般的に、準備段階の習作である下絵や画稿(*)などは、完成品として本画より一段劣った、資料的な物としてとらえられがちです。
しかし、暁斎の下絵は、本画にはない独自の魅力に満ちています。
*画稿(がこう):絵の下描きのこと。
【通期展示】《河竹黙阿弥作『漂流奇譚西洋劇』米国砂漠原野の場 下絵》1879(明治12)年 河鍋暁斎記念美術館蔵
本作は、1879(明治12)年、東京・新富座で上演された歌舞伎狂言『漂流奇譚西洋劇(ひょうりゅうきたんせいようかぶき)』で使用されたあんどん絵の下絵です。
月岡芳年らと共に16枚を分担し、暁斎は5図描いたと言われていますが、現存する下絵は4図だそう。
描かれている内容は、日本の漁師の親子が船の難破により別れ別れになったが、救助されて、欧米の各地を経て、パリ・オペラ座近くで再会する、というユニークな物語です。
新発見! 下絵の失われていたピースとは?
【通期展示】《鳥獣戯画 猫又と狸 下絵》制作年不詳 河鍋暁斎記念美術館蔵
《鳥獣戯画 猫又と狸 下絵》は、暁斎の画稿の中でも、ユニークな画題やユーモアあふれる描写によって広く知られています。
本展では、この作品の失われていたピースを初公開!
新発見の下絵のピースは、《猫又と狸》の画面の上に続く部分で、木の先端からぶら下がるねずみたちが描かれています。
下絵や画稿には、本作のように、上から小さな紙を貼りつけたものが多くあります。
部分部分を何度も書き直し、完成させていく。このような作品制作の過程を観ることができるのも、貴重な機会です。
ぜひ、会場で細かいところまで注目してみてください。
暁斎の迫力ある描写と表現の力量を存分に味わえる本展。
年明けは1月2日より開館されます(後期展示も同日から)。
入場チケットは、日時指定の事前購入制です。詳しくは美術館公式サイトをご確認ください。
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は12月25日23:59まで!
※本展のプレゼントチケットは、1/29まで有効の招待券となります。
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Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】
暁斎の下絵や画稿は、あまり観たことなかったので新鮮でした。