おびかけ日和

OBIKAKE SPECIAL/あやしい絵展(東京国立近代美術館)

2021.4.16

ただいま臨時休館中
※詳細は公式サイトをご確認ください。

 

皆さんは「あやしい」という言葉に、どのようなイメージがありますか?

「妖しい」や「怪しい」、また「奇しい」など、さまざまな漢字であてはめることができます。

これらの言葉の意味に共通するのは、いわゆる「キレイ」や「見ていて心地よい」とは少し違う、神秘的で不可思議奇怪なようすを表していることです。

 

現在、東京国立近代美術館では、「あやしい絵展」が好評開催中!

グロテスクやエロティック、退廃的、ミステリアス・・・。

本展は、そうした美しいだけではない「あやしい」魅力を持つ、幕末から昭和初期に制作された絵画、版画のほか、雑誌や書籍の挿絵など約160件の作品を紹介する展覧会です。

 

 

本コラムでは、「あやしい絵」の深いストーリーから、アート好きの橘美里さんとの本展レポート、展覧会オリジナルグッズや、おびかけ編集部おすすめのカフェ情報などをご紹介していきます。

コラム最後にはチケットプレゼントもありますので、そちらもお見逃しなく!

 

 

※作品保護のため、会期中一部展示替えがあります。作品リストはコチラ

 

 

「安珍(あんちん)と清姫」の伝説は、道成寺(どうじょうじ)伝説がもとになっています。

若くて美しいお坊さん・安珍は旅の途中、一晩宿を借ります。その宿の娘である清姫は、安珍に一目惚れをします。

困った安珍は清姫に「旅の帰りにもう一度寄る」と嘘の約束をして、そのまま逃げてしまいます。約束が嘘だということに気が付いた清姫は、大激怒!

安珍を追いかける清姫は怒りのあまり大蛇に姿を変え、道成寺の鐘の中に隠れた彼を焼き殺してしまいます。

 

橘小夢(たちばな さゆめ)が描いた《安珍と清姫》は、この伝説のクライマックスシーンを描いたもの。鐘の中では、安珍に清姫が絡みつきキスをしようとしている、あやしくも美しいシーンが描かれています!

 

 

作家プロフィール

橘小夢(1892-1970)

秋田生まれ。大正~昭和初期を中心に日本画や版画、挿絵などのジャンルで活躍した画家です。

竹久夢二のほか、オーブリー・ビアズリーやムンクなど西洋美術からも刺激を受けたのち、独自の画風を確立。小夢は自身の作品を「優奇世絵(うきよえ)」とも称しました。

 

 

鑑賞者を吸い込むほどの強い瞳と肉感のある唇・・・。

この非常に官能的な姿で描かれている女性《マドンナ・ピエトラ》は、イタリアの詩人・ダンテの詩に詠われた女性です。

詩の中で彼女は、自分に恋する男性をみな捕らえて、石に閉じ込めてしまうそう

冷酷な女性である《マドンナ・ピエトラ》は、ロセッティが繰り返し描いたファム・ファタール(運命の女)のモデルであると言われています。

 

 

ロセッティの作品で裸婦を描いたものは珍しく、本作は油彩画のための習作として描かれたのでは、と言われています。

完成作では服を着た女性を想定していたのか、胸の上の彼女の左手は衣服をつまむ仕草をしています。

 

 

作家プロフィール

ダンテ・ガブリエル・ロセッティ(1828-1882)

イギリス、ロンドン生まれ。ミレイなどと共にラファエル前派同盟を結成しました。ダンテなどの文学作品や神話をモチーフにした作品のほか、肖像画なども手掛けたました。

詩人でもあったロセッティは、自身の詩を絵画化していたそうです!

 

 

本作は、河竹黙阿弥作「處女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし)」(通称:切られお富)のワンシーン描いたもの。モデルは、作者の義理のお姉さんです。

「切られお富」は、かつての恋人のため、ゆすりや殺人に手を染め、最後はその恋人と自害する悪女・お富の物語です。

 

 

着物の襟には天女が、裾には火炎の文様が配置されています。これは、悪女・お富の二面性を示しているのでは? と言われています。

また女性の微笑みについて作者は、レオナルド・ダヴィンチの《モナ・リザ》からの影響を受けたとほのめかしていたそうです。

 

 

作家プロフィール

甲斐庄楠音(かいのしょうただおと/1894-1978)

京都市生まれ。大正7(1918)年の第1回国画創作協会展で《横櫛》が入選。レオナルド・ダヴィンチなど、西洋美術からの影響も受けながら、写実的な表現による「あやしい」女性像などを描きました。

 

 

 

本作のタイトルにある「大穴牟知命(オオナムチノミコト)」とは、出雲大社の主神である大国主神(オオクニヌシノカミ)のことです。

『古事記』神代巻で、大穴牟知命は兄たちの陰謀により焼石を抱かされ焼け死んでしまいます。

女神である蚶貝比売(キサガイヒメ)蛤貝比売(ウムギヒメ)が、大穴牟知命を救うために遣わされました。

 

描かれているのは、2人の女神が大穴牟知命を介抱しているシーン。向かって左側が蚶貝比売、右が蛤貝比売です。

作者は制作の際、女神のモデルを恋人の福田たねと、当時身を寄せていた家の近隣の住人にしたそう!

こちらをジッと見つめる蛤貝比売のモデルは、恋人・たねであると言われています。

 

本作は、東京展のみの出品となります! お見逃しなく。

 

作家プロフィール

青木繁(1882-1911)

福岡、久留米生まれ。

東京美術学校(現・東京藝術大学)在学中から上野の帝国図書館(現・国際子ども図書館)に通い、『古事記』『日本書紀』などの神話や宗教に強い関心を寄せていました。

青木は、28歳という若さでこの世を去りました。代表作『海の幸』を含め、未完成の作品が多いです。

 

 

展覧会公式図録もオススメ!

公式図録表紙には、水島爾保布(におう)の描いた「人魚の嘆き」(谷崎潤一郎の小説)挿絵が使用されています。

180度しっかり開きやすい製本のため、読みぐせを気にせずお気に入りのページを開くことができますよ♪

 

作品解説や作家解説をはじめ、作品のもととなったストーリーについても詳しく記載されているので、オススメです!

 

ミュージアムショップのほか、オンラインストア「まいにち書房」からも購入可能!

詳しくはコチラをご覧ください。

 

 

音声ガイドは、人気声優・平川大輔さんが担当!

本展の音声ガイドナビゲーターは、「鬼滅の刃」や「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズなどで活躍中の、声優・平川大輔さんが担当しています!

 

音声ガイドを聞きながら、展示作品を見るとより理解が深まるかも♪ こちらもぜひ、借りてみては?

 

貸出料金:600円(税込)

収録時間:約40分 ※展示替えに伴いガイド内容が一部変わります。

ガイドに関するお問合せ

TEL:03-5771-4083(平日10:30-17:30)

 

(次ページ:橘美里さんと一緒に、「あやしい絵展」を徹底レポート!/カフェ情報もあります。)

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Editor  静居 絵里菜

【編集後記】

今回ご紹介した4作品以外にも、本展では魅力的な「あやしい絵」が紹介されています。

大阪にも巡回するので、関西方面の方もお楽しみに!

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