展覧会レポート
2021.6.8
アメリカから90点以上が里帰り!
日本絵画史のジャンルをほぼ網羅する展覧会
サントリー美術館にて「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品」が開催中です。
展示風景
アメリカにあるミネアポリス美術館(Minneapolis Institute of Art 通称 Mia〈ミア〉)。浮世絵をはじめとする日本絵画を数多く所蔵し、その質・量は国際的にも高く評価されています。
本展では、Miaの日本美術コレクションの中から、日本絵画の変遷をよりすぐりの優品で紹介します!
時の権力者に愛された狩野派
狩野正信から始まった「狩野派」は、血縁で繋がる狩野家を中心とした専門の絵師集団です。室町時代以降、狩野元信と狩野永徳の代におおいに発展しました。
江戸時代には、政治の中心が江戸になったことから狩野派も本拠地を京から江戸へ移し、幕府や藩の御用絵師をつとめます。
狩野山雪《群仙図襖(旧・天祥院客殿襖絵)》
四面 江戸時代 正保3年(1646) ミネアポリス美術館
【全期間展示】
一方、狩野山楽や山楽の養子・狩野山雪などは京に留まり、個性的な作品を描きました。なかでも山雪の「群仙図襖(旧・天祥院客殿襖絵)」は、ミネアポリス美術館の日本絵画を代表する作品のひとつです。
本章では探幽ら江戸狩野と山雪・山楽ら京狩野の作品を通じて、狩野派の軌跡を特集します。
江戸の芸術といえば?「琳派」
琳派は17世紀初頭に活躍した俵屋宗達(たわらやそうたつ)を始まりとします。
宗達は、やまと絵や水墨画からモチーフからヒントを得て、たらし込み*の技法などを駆使した特色ある作風を生み出しました。その作風は尾形光琳や酒井抱一へと引き継がれていきます。
*たらし込み・・・琳派を中心に用いられた日本独自の技法で、先にに塗った水墨や絵の具が乾かないうちに、異なる濃度や色の水墨、絵の具を加えること。
鈴木其一《三夕図》
三幅対 江戸時代 19世紀 ミネアポリス美術館
【全期間展示】
酒井抱一の弟子のなかでもとくに優れた画力を持っていた鈴木其一(すずき きいつ)。《三夕図》では、たらし込みの技法を用いて秋の夕べのもの悲しさを見事に表現しています。
本章では宗達や抱一、鈴木其一らを中心に日本絵画を代表する琳派芸術の美を紹介します。
庶民の芸術「浮世絵」
「江戸時代」「美人画」「役者絵」と聞くとまず浮かぶ浮世絵版画。当時大都市に発展した江戸で、独自に花開いた新しい芸術でした。
菱川師宣(ひしかわもろのぶ)に始まるといわれる浮世絵は、版元を中心とした絵師・彫師・摺師による分業体制を確立したことで、江戸を代表する美となります。
第5章 浮世絵 展示風景 ※一部展示終了の作品があります。
初期の版元が江戸の中心地・日本橋近辺にあったため、浮世絵版画は江戸の人々だけでなく、地方の旅人たちの目にもとまり、地方の人からも求められるようになりました。
ミネアポリス美術館が所蔵する浮世絵コレクションはなんと約2500点!本展では、選りすぐりの名品を紹介します。
個性的な「奇想派」
江戸時代後期、これまでの流派や様式にとらわれない画風が存在感を示し、多様な作品が生まれます。
現代でも高い人気を誇る伊藤若冲や曾我蕭白(そが しょうはく)に代表される「奇想」の絵師は、デフォルメした構図の水墨画や細密な濃彩画によって、独自の境地を開きました。
曾我蕭白《群鶴図屛風》
六曲一双 江戸時代 18世紀 ミネアポリス美術館
【全期間展示】
奇想の絵師の作品は、かつて評価があまり高くない時代もありました。しかし、アメリカをはじめ国外の日本美術愛好家が優品の数々が収集したことにより、今日まで数多くの作品を楽しむことができます。
水墨画・狩野派・やまと絵・琳派・浮世絵・文人画(南画)・奇想派・近代絵画というように、江戸絵画を中心に日本絵画史の主要ジャンルをほぼ網羅したぜいたくな機会となる本展。
なお、本展は撮影可能です!ぜひ‟推し絵師”を見つけてくださいね。
第1章 水墨画 展示風景
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サントリー美術館 開館60周年記念展
ミネアポリス美術館 日本絵画の名品
2021.04.14~2021.06.27
開催終了
サントリー美術館
※作品保護のため、会期中展示替を行います。
※各作品の出品期間は、出品作品リスト(PDF) をご参照ください。
Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
海外に行くことが難しい今、里帰り作品は貴重ですね♪