展覧会レポート
2021.7.16
大江戸の人びとの行事
ハレを彩る道具が勢ぞろい!
東京都江戸東京博物館にて、特別展「大江戸の華―武家の儀礼と商家の祭―」が開催中です。
展示風景
「大江戸」とは、世界有数の大都市であった江戸の表現です。
本展では、江戸の武家や商家の儀礼、祭りなどの年中行事をとりあげ、大都市・江戸の人びとの暮らしや、人生における“ハレ”の場面を紹介します。
人生における“ハレ”とは?
「ハレ」は、「ケ」と対で用いられる、日本の伝統的な世界観のひとつです。
「ハレ」は、儀礼や祭、年中行事などの非日常、反対に「ケ」は、ふだんの生活である日常を表します。
江戸時代はすでに身分制度が徹底していましたが、武家も商家も「ハレ」の日は盛大に取り組まれました。本記事では、身分別に見どころを紹介します。
見どころ①
武家の華やかな表道具
戦乱が収束し、平和が訪れた江戸時代。武家には、武芸よりも主君への忠義や家の秩序、その秩序を維持するための儀礼が求められるようになりました。
戦場とは異なる、儀礼で用いられた華やかな甲冑などの表道具(*)は、身に着けた人の年齢や位に注目して鑑賞するのがおすすめです!
*表道具:身分、職業を代表する道具。
展示風景
見どころ②
商人の年中行事・初午の祭り
初午(はつうま)は、2月の最初の午の日のことです。江戸時代、初午の日には「初午祭」というお祭りがとり行われるのが伝統でした。
四神旗 弘化5年(1848)2月 江戸東京博物館/所蔵 ほか展示風景
四神旗は、江戸時代に手広く商業活動を展開した大商人・鹿嶋屋東店(かじまやひがしだな)によるものです。
このほかにも、大商人をはじめとする多くの商家や町人により、「ハレ」の行事が盛大に行われました。そんな行事を彩った祭道具が幅広く紹介されています。
見どころ③
武家を支えた女性たち
武家の女性たちは、婚礼を通して家と家の橋渡し役となり、世継ぎを立派に育て上げることで、一家の繁栄を支えました。
梨子地葵紋散松菱梅花唐草模様蒔絵女乗物 元禄11年(1698) 江戸東京博物館/所蔵 (7/10~8/9まで展示) ほか展示風景
婚礼行事をはじめとする女性の移動に使われた「女乗物(おんなのりもの)」。
当時は贅沢を禁止する禁令が出されていたため、黒漆塗りに家紋と唐草模様の蒔絵(*)の乗り物が主流でした。
しかし、徳川家に関わる婚礼はとりわけ鮮やかで、梨子地(*)の女乗物が用いられました。
*蒔絵:金粉・銀粉などで漆器の表面に絵模様をつける、日本の美術工芸。
*梨子地:金紛・銀粉を蒔(ま)いた上に透明の漆を塗り、これを通して金銀粉が見えるようにした蒔絵(まきえ)。
中に描かれたものをよく観ると、屋敷での幸せそうな様子が想像できました。
お嫁にいく娘が、道中寂しい思いをしないようにという配慮だったのでしょうか?
こちらの「梨子地葵紋散松菱梅花唐草模様蒔絵女乗物」は、現在までに4挺しか確認されていない大変貴重なものです。※展示替えのため8月9日までの展示。お見逃しのないように!
見どころ④
海を渡った鎧が里帰り!
本展の開催にあたり、アメリカとイギリスから里帰りを果たした2領の鎧を紹介します。
fromアメリカ・ミネアポリス美術館
金小札変り袖紺糸妻紅威丸胴具足 江戸時代 ミネアポリス美術館、エセル・モリソン・ヴァン・ダーリップ基金/所蔵 ほか展示風景
「金小札変り袖紺糸妻紅威丸胴具足」は、
前立て部分の大きな蟷螂(かまきり)の彫刻が据えられた、紀伊徳川毛家ゆかりの具足(*)です。
2009年10月13日にニューヨークの競売にかけられて以降、ミネアポリス美術館に所蔵されています。
*具足:日本の甲冑(鎧と兜)の別称
fromイギリス・王立武具博物館
*色々威丸胴具足 岩井与左衛門/作 1613/贈 王立武具博物館(イギリス)/所蔵 ほか展示風景
「色々威丸胴具足」は、徳川家康が準備し、徳川秀忠からイギリス国王ジェームズ一世に贈られたものです。
江戸が泰平の世へ転換していく中で、鎧の役割が武具から儀礼の道具へと変化したことが読み取れます。
貴重な里帰り作品を含む全79点から、江戸のハレの日を紹介する本展。
明日の活力チャージに、江戸博で江戸の賑わいを感じてみてはいかがでしょうか?
展示風景
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本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は2021年7月26日23:59まで!
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特別展 「大江戸の華―武家の儀礼と商家の祭―」
2021.07.10~2021.09.20
開催終了
東京都江戸東京博物館 1階特別展示室
Editor | 松栄 美海
【編集後記】
甲冑シリーズがとにかく面白かったです。
音声ガイドをお供に、晴れやかな江戸時代にタイムスリップできますよ!