Be-dan
2019.11.25
東京・広尾にある、国内最高レベルの近代・現代日本画コレクションを所蔵する山種美術館。
館長の山﨑妙子さんは、物心がついた時から、自宅で日本画の掛け軸をお祖父様と楽しんでいたそうです。それ以来、あらゆる場所で美術と関わってきた美術鑑賞の達人でもあります。最終回では、OBIKAKE読者のために、館長おすすめの美術鑑賞法や、次回の美術展の見どころをお聞きしました!
―山﨑館長が、美術鑑賞で一番大切にされていることはなんですか?
藝大在学中に、先生方からいただいた「とにかく良いとされる作品を自分の目で直接見て、ものを見る目を養いなさい」という言葉を大切にしています。それ以来、国内外を問わずあらゆる場所で美術の名品を見るように心がけてきました。まず実物を「見る」ことによって、その人独自の感性やものの見方が磨かれていくと思います。
―日本画鑑賞初心者の方に、鑑賞のアドバイスをいただけますか?
日本画というと、敷居が高いとか難しいというイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、実際に見てみると全然違います。日本の自然や人々の暮らし、四季折々の自然を描いた作品は、初めて見た人でも必ず心に響くものがあると思います。まずは気軽に、作品を「見に」美術館にお出かけしてみてください。
実際、アプリゲーム「めいこい」とのコラボで初めて日本画に触れた多くの方が「すごく良かった」と感想を残してくださいました。画像で見るのと実際に美術館などに足を運んで実物を見るのとでは、全く印象が違ってくるのが日本画なんです。
―なによりも、まず実物を「見る」ことが大切なんですね?
そうですね。日本画の絵具は、鉱物を砕いて絵具にしているものがあり、よく見ると絵の表面がキラキラ輝いていたり、ざらざらした質感も楽しめます。また、金銀を使った作品も多く、光の加減や見る人の立ち位置で絵の表情も毎回変わってくるんです。このような発見が日本画鑑賞の醍醐味といえますね。
当館では、毎回企画展のたびにプロの照明家の方が、それぞれ作品の特徴を捉えた上で、最適なライティングをしてくださっているので、展覧会で見るたびに作品がその都度違う表情に見えるのも面白いですよ。
―現在開催中の特別展「東山魁夷の青・奥田元宋の赤―色で読み解く日本画―」の見どころを教えていただけますか?
サブタイトルに「色で読み解く」とあるように、本展は日本画独特の岩絵具を中心とした「色」という観点から日本画を観ていく展覧会です。私達の日常生活の中では西洋化された色合いが使われていますが、日本画独自の色使いに注目して作品を見ていただきたいです。
―カラフルな展覧会になりそうですね!
展示は、日本画で使われる主要な色別に、印象的な色使いの作品を分けて展示しました。たとえば同じ赤を使っていても、絵具や表現の方法が違うことで、随分色の見え方が違うことがあります。そうした作品ごとの微妙な色のニュアンスの違いなどを比較して楽しんでいただける展示になっています。初心者の方でも直感的に見てわかるようなテーマなので、入門編として絶好のテーマかもしれません!
―山﨑館長のイチオシ作品はなんですか?
やっぱり私はこの東山魁夷の「年暮る」が大好きです。魁夷がこの絵の中で表現した叙情的な冬の情景は、かつて京都で実際に見られた風景に近いんです。町屋という、低い屋根が連なった家の、今ではもう失われてしまった京都の風景なんです。このしんしんと雪が降り、暮れていく京都の大晦日を切り取った作品の中には、昔の人の生活の息遣いなども感じられて、古き良き美しい日本が表現された傑作だと思います。ぜひ、展覧会でじっくりご覧くださいね。
―ありがとうございました!ぜひ「魁夷の青」じっくり味わいたいと思います!
information
【山種美術館 広尾開館10周年記念特別展】
東山魁夷の青・奥田元宋の赤―色で読み解く日本画―
会場:山種美術館
会期:2019.11.02〜12.22
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/272-2/
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。