展覧会レポート
2019.11.12
窓をめぐるアートと建築の旅へ
ジャンルを超えて58作家が大集結
東京国立近代美術館にて「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」が開催中です。
みなさんは、「窓」について深く考えたことはありますか?
本展では、絵画やインスタレーション、映像、建築のドローイングなど、窓に関わる多様な美術作品を一堂に集めます。
展示は14章に分かれていますが、ここでは特に見逃せない作品をご紹介します。
大画家によって繰り返し描かれた窓
マティスは窓をモチーフに、たくさんの作品を残しています。
アンリ・マティス《窓辺の女》1920年 油彩・キャンバス みぞえ画廊
マティスの作品は、窓の外と内にあるものがよく似た色や形で結び付けられているのが特徴です。
女性がまとう服、ソファ、窓枠、ヤシの木がすべて、黄のトーンで描かれています。
アンリ・マティス《待つ》 1921-22年 油彩・キャンバス 愛知県美術館
《待つ》は、南仏のニースで借りた部屋を自分好みに改造して描かれたものです。
こちらも、左の女性の左手とヤシの葉の重なりなど、内と外を結ぶ工夫がされています。
内と外、分かれているけれど異なる世界ではない。マティスは空間の奥行きをなくそうとしたのでしょうか?
外から隔離された人々―窓の外と内
奈良原一高〈王国〉より《沈黙の園》 1958年 東京国立近代美術館©IKKO NARAHARA
写真家・奈良原一高の〈王国〉は、彼の初期を代表するシリーズです。
本作《沈黙の園》の舞台は、北海道の「男子トラピスト修道院*」です。
外から隔離された環境の中で唯一、窓は内と外を自由につなぐ存在となっています。
*厳格な規律のもと、キリストの弟子として、一般社会から身を引き「祈りながら働き、働きながら祈る」という毎日を送る修道士が暮らしています。修道士は沈黙の空間の中で絶え間なく祈っています。
厳しい入国審査アリ! 西京国
展示を進むと突然現れる「西京国」の入国管理局。
入国するには、「とびきりの笑顔か、お腹の底からの大笑い」「お好きな歌を一小節」「チャーミングな踊り」のいずれかを係員に披露しなければなりません。
西京人(小沢剛、陳劭雄、ギムホンソック) Xijing Men (Ozawa Tsuyoshi, Chen Shaoxiong, and Gimhongsok) 第3章:ようこそ西京に― 展示風景
私たちが暮らす国には国境があります。この空間では、国と国が区切られているがゆえに、それぞれの国が他国に対して開いておかなければならない「入国管理局」という窓を表しています。
移民や難民が増え続ける今日、これらの窓を開けるか、閉ざすか。世界の国々で大きな議論が生じています。
ものごとの正しい見え方ってなに?
ゲルハルト・リヒター《8枚のガラス》2012年 ワコウ・ワークス・オブ・アート
©Gerhard Richter, courtesy of WAKO WORKS OF ART PHOTO:Tomoki Imai
さまざまな角度に傾けられた8枚のガラス板でできているこちらの作品。
約35%は鏡のように像を映し、65%は向こう側が透けて見えるという特殊なガラスを使用しています。
窓から外を眺めると、形がゆがんで見えたり、色が変わって見えることがあります。この見え方もひとつの真実である、とリヒターは語っています。
窓と美術の密接さ。改めて再考する機会になりますよ。
展示風景
Information
展覧会名:窓展:窓をめぐるアートと建築の旅
会場:東京国立近代美術館
会期:2019.11.01〜2020.02/02
詳細:https://obikake.com/exhibition/5915/
公式サイト:https://www.momat.go.jp/ (東京国立近代美術館)
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は11月21日23:59まで!
Editor | 三輪 穂乃香
「窓」ってこんなに多様なのね、と大満足。