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中世キリスト教美術を研究するキッカケ!1冊の彩色写本が人生を変えた!(2/4)

2019.12.9

立教大学文学部教授の加藤磨珠枝(かとう ますえ)先生。「中世キリスト教美術」を研究されています。

 

非常に物腰柔らかで優しい先生ですが、学生時代のお話を伺うとアクティブな青春時代を過ごされたそうです。第2回では、加藤先生がなぜ中世美術に興味を持つようになったのか、学生時代の研究などについてお聞きしました!

(第1回はコチラ

 

 

―中世のキリスト教美術を研究してみたい!と思うようになったきっかけを教えていただけますか?

 

東京藝術大学の学部生時代に、お金を貯めて休学して、バックパッカーで1年間ヨーロッパ旅行に行きました。その旅の途中、アイルランドの首都・ダブリンで中世の素晴らしい写本挿絵と出会ったことがきっかけでした。

 

―凄いですね!

 

当時は、現代美術を研究しようと思っていて、格安旅行に出かけたのも、ヨーロッパの主要な美術館やギャラリーを見て回りたかったからなんです。最初はミラノで3~4ヶ月滞在してイタリアの現代美術をしっかり学んでから、その後イギリス、フランス、ドイツはもちろん、北欧や、オランダ、ベルギー、スペインまで主要な美術館を徹底的に見ていきました。

 

―その中でなぜダブリンで見た写本に惹かれたのでしょうか?

 

ヨーロッパの美術館を回る内に、好きで見ていた現代美術の作家たちも、過去の美術や文化から影響を受けていると気づきました。だから現在だけを見ていても、本当に現代作家達が制作している土壌を理解することは難しいのかなと感じはじめました。

 

それなら、彼らが影響を受けた古い時代を知りたいなと思うようになって、どんどんさかのぼったら、ダブリンで見た写本挿絵にピンと来て中世にたどりついた、というわけです。旅行に行く前は、イタリアのニューペインティングの画家に興味があったのに、旅行中に卒業論文のテーマを「中世の彩色写本」へと変えちゃいました(笑)。

 

―まさに人生を変えた旅行ですね。中世美術よりも現代アートがお好きだったのですね!

 

そうなんです。高校時代は名古屋に住んでいたのですが、最初は染織工芸の道を目指して美大受験校へ通っていました。でも、見るのは現代アートが好きだったんです。ちょうどバブルの時代で、企業も現代美術にお金をかけていたので、名古屋のギャラリーでも海外の現代アート作品がたくさん楽しめました。

 

当時はお金がなかったので、無料で入れるギャラリーへよく行っていました。

 

先生の本棚には現代アートに関する本も沢山ありました!

 

―今後、現代アートの研究も視野に入れて考えていますか?

 

そうですね! 現在取り掛かっている「ユダヤ教美術の誕生について」というテーマが終わったら、今度は現代アートと宗教の関係を探る「現代における宗教美術」というテーマが面白いなと思っています。現代アートって、一見宗教とは全然関係ないと思われるかもしれませんが、実は現代の作家でも、神様との関係は切り離せないんです。

 

―中世キリスト教美術と、ある意味似ているところがあるのですね?

 

そうかもしれません。作家たちが自分と社会の距離を考えるときに、「人間を超えた存在って何だろう」という疑問に行き着くことが多いのではないかと思います。目に見えないものを描くとき、ではその目に見えないものは何かというところで、神のような存在について掘り下げて考えるのではないでしょうか。

 

21世紀の現代美術でも、宗教にかかわることはもっときちんと文章化されていいと思っているので、これから研究していくつもりです。

 

 

いかがでしたか?ひとつの出会いで研究テーマをガラリと変えた加藤先生のお話は、エネルギーに満ちています!

次回は、先生の現在のお仕事内容について詳しくお聞きします。お楽しみに!

第3回につづく)

 

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Writer | 齋藤 久嗣

脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。

首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive

 

 

Editor | 三輪 穂乃香

OBIKAKE編集部所属。

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