Be-dan
2019.12.23
立教大学文学部教授の加藤磨珠枝(かとう ますえ)先生。
中世はもちろん、古代ギリシャから現代アートまで幅広く西洋美術を鑑賞されています。最終回では、加藤先生の美術鑑賞法や、中世美術を観れるオススメのスポットを教えていただきました!
―加藤先生は、美術館に行かれた際、どのように鑑賞されていますか?
1点1点すべてにじっくり時間をかけるというよりは、ザッと見ていって、気になるところはあとで見直すスタイルですね。あまり良いとか悪いとか考えず、まずは純粋な目で楽しむようにしています。
その後、気になった作品の前に立ちどまり、あれこれ考えながら観ます。作品との出会いは不思議なもので、たとえ同じ作品であっても、自分のその時の状態や関心によって、違う表情を見せてくれると思います。だから、出会いの機会は多ければ多いほど、自分の美術鑑賞の世界も広がります。
―アート初心者の方に、加藤先生ならではの美術鑑賞法を教えていただけますか?
美術館でなくても、いろんな場所の探検をしてほしいです。たとえば銀座に行くと、GINZA SIXやエルメス銀座店のアートギャラリー、シャネル銀座店のネクサス・ホールなど、現代アートの面白いものに気軽に触れられる場所がありますよね。私は商品は一度も買ったことはありませんが、もっぱら見学ひとすじです(笑)。すべて無料なので食わず嫌いにならずに、とにかく行ってみるのがオススメです。最初は敷居が高く感じられるかもしれないですが、実物を目にする楽しみを味わうことができますよ。
―日本で中世美術を見る際に、良い美術館はありますか?
残念ながら、日本では中世の美術工芸品をまとめて見られる場所があまりありません。それでもいくつか挙げてみると、まず上野の国立西洋美術館の常設展。イコンや装飾写本、中世末期の宗教画の実物をまとめて観られます。あとは観光地としても有名な、京都のギリシアローマ美術館。中世美術の源流に触れることができます。それから、徳島県の大塚国際美術館ですね。そこではジョットのスクロヴェーニ礼拝堂やトルコのカッパドキアの教会堂がそのまま復元されていて、度肝を抜かれますよ。
―では、ヨーロッパだといかがでしょうか?
これは色々ありすぎて一言ではまとめられない(笑)。ヨーロッパの古い街には必ず中世の足跡が残されていますから。
ただ、イタリアで世界遺産にも指定されているラヴェンナという街は、西ローマ帝国の最後の首都で6世紀頃まで栄えたのですが、だんだん廃れていきました。そうするとそのまま6世紀のものが残ったままになるんです。教会建築や教会内部のモザイク画に素晴らしいものが多数残されています。そんな街も狙い目です!
―中世の美術を本格的に勉強したい人はどんなことから始めればいいですか?
まずは本を読むことからですね。なかなか実物を見られないじゃない?最近では、図版が美しくて読みやすい啓蒙書も増えましたし、インターネットでも画像を気軽に見られるようになったので、まずはコツコツと知識を増やしましょう。そして日本なら、一度大塚国際美術館へ足を運んでみて下さい!中世美術オタクもうなるはず。
―ぜひ一度大塚国際美術館に行ってみたいと思います!ありがとうございました!
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。