展覧会レポート
2019.12.27
踊る・演じる、装うなどの「身体表現」がテーマ!
平塚市美術館の所蔵品から「パフォーマンスする絵画」を紹介
平塚市美術館にて、「冬の所蔵品展 パフォーマンスする絵画」が開催中です。
展示風景
人間の身体表現は、ダンスや演劇といった非日常の空間をつくりだすものから、掴む・食べるなどの単純な動作と、さまざまです。これらは、時代・国を問わず芸術家たちにとってインスピレーションの源になってきました。
「パフォーマンスする絵画」と題した本展では、踊りや演じること、装う、祈るなど「身体表現」をテーマにした作品を紹介。あわせて、日本画・彫刻など新収蔵品27点も展示されます。
イキイキとした馬と鮮やかな青が特徴的!
海老原 喜之助《曲馬》1935年頃 平塚市美術館蔵
海老原喜之助(えびはら きのすけ/1904-1970)は、鹿児島市生まれの画家。大正末期から昭和にかけてフランスと日本で活躍しました。
背中の上でなわとびをする少年が可愛らしい作品!海老原は大の馬好きで、馬をモチーフにした作品を多く残しました。背景の鮮やかな青色は「エビハラ・ブルー」と呼ばれ親しまれています。
「見返り美人」がたくさんいる不思議な作品
福田 美蘭《見返り美人 鏡面群像図》2016年 湘南フレンズ倶楽部寄贈
福田美蘭(ふくだ みらん/1963-)は、美術や現代社会が持つ視覚に関するさまざまな問題を取り上げた作品を制作しています。
本作は菱川師宣(ひしかわ もろのぶ)の傑作「見返り美人図」(東京国立博物館蔵)が、さまざまな角度から描かれているユニークな作品。2016年に同館で開催された「不思議なアート」展に出品され、高い評価を集めました。
タイトルに「鏡面群像図」とあるように、実際の「見返り美人図」と同じに描かれている左から3人目以外は、鏡に映った像になっています。
わかりづらいと思う方は左から2人目に注目。よ〜く見ると着物の襟合わせが右前になっています。
写真ではなく「絵」です!
一見すると写真に見える本作。近くでみると、絵の具で描かれていることがわかります。
鴫 剛《SHONAN2》1988年 寄贈
鴫 剛(しぎ ごう/1943-)は、写真を克明に描き出す画家。印画紙上の粒子を、絵具によって再現する初期作品から、映像のブレに着目した作品などを制作しています。
遠目で見る波の動きはまさに写真! 編集部お気に入りの作品です。
多角的に描かれた日常
2019年11月に死去した石井礼子(いしい れいこ/1974-2019)の寄託作品もあわせて紹介されています。
(右手前)石井礼子《私の周囲 お気に入り》2006年 平塚市美術館寄託
「私の周囲(まわり)」は、彼女の日常を日記のように書き留めた作品。大画面に墨で描かれたモノクロームの絵が目を引きます。
本展では、寄託作品20点をすべて展示。高さ2メートルの作品が展示室内に並ぶのは壮観です。
石井礼子《私の周囲》平塚市美術館寄託 展示風景/(手前)長谷川さち《風の家》2012年 寄贈
平塚市美術館の所蔵品からさまざまな身体のパフォーマンス表現が楽しめる展覧会。展示室ロビーでは、鍛金(たんきん)作家、糸賀英恵の「糸賀英恵展 うつろいのかたち」が同時期開催中です。こちらもあわせてお楽しみください。
information
会場名:平塚市美術館
展覧会名:冬の収蔵品展 パフォーマンスする絵画
会期:2019.12.14〜2020.02.24
開館時間:9:30〜17:00
休館日:月曜日(ただし、1/13は開館)、1/14(火)年末年始(12/29~ 1/3)
料金:一般 200円、高大生 100円
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/6915/
Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】石井さんの作品20点が一堂に展示されるのは、非常に珍しいとのこと。ぜひ足を運んでみてください!