展覧会レポート

開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展

2020.1.24

浮世絵界のスターたちが描いた「肉筆画」の名品が揃い踏み!

北斎の娘・応為の名品も約2年ぶりに公開

 

太田記念美術館で、「開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展 ―歌麿・北斎・応為」が開催されています。

 

(手前)奥村政信《団十郎 高尾 志道軒円窓図》宝暦(1751-64)前期頃 太田記念美術館蔵

 

都内でも数少ない浮世絵を専門とする太田記念美術館は、2020年1月に開館40周年を迎えました。

 

本展では、同館の幅広い所蔵の中から、浮世絵師が直接描いた一点ものである「肉筆画」を選りすぐって紹介。近年注目を集めている北斎の娘、葛飾応為(かつしか おうい)の「吉原格子先之図」も展示されます。

 

 

「肉筆画」ってなに?

私たちが普段見る、広重の「東海道五捨三次」などの浮世絵は、絵師1人の手で作られるものではありません。絵師→彫師(ほりし)→摺師(すりし)と、3人の職人の手を経て作られています。

 

ズラリと肉筆画が並ぶ展示室内は壮観です!

 

今回展示されている肉筆画とは、絵師が発注を受け、紙や絹に描いて仕上げる一点物のこと。絵師たちの生の筆づかいや、その技量を知ることができる貴重な資料です。

 

葛飾北斎の娘が描いた作品!2年ぶりに公開

 

葛飾応為《吉原格子先之図》文政〜安政(1818-60)頃 太田記念美術館蔵

 

本作は、葛飾北斎の娘である葛飾応為(おうい)の珍しい肉筆画の一つ。吉原遊郭にあった和泉屋の張見世(*)の様子を描いた作品で、応為の代表作に数えられています。

 

*張見世(はりみせ):遊郭で、遊女が道に面した店先に居並び、格子の内側から自分の姿を見せて客を待つこと。

 

提灯がなくては足元がおぼつかないほどの暗闇に浮かぶ、遊女たちがいる張見世が幻想的!光と影、明暗を巧みに強調した応為のアイディアが素晴らしいです。

 

ちなみに、3つの提灯にはそれぞれ、「応」「為」「栄」の文字が隠し落款(*)として記されています。単眼鏡を持って、じっくりと見てみるのもオススメです。

 

*落款(らっかん):書画が完成した時、作者が証明し、または押印をすること。作者のサイン。

 

北斎も負けてません!

 

応為のお父さん、葛飾北斎の肉筆画「雨中の虎」も展示されています。

 

雨の中、大地を力強く踏みしめて上空に雄叫びをあげる虎が描かれた本作。制作年は、北斎の没年である嘉永2年です。この時すでに北斎は数え年90歳。筆の力強さは衰えていません!

 

葛飾北斎「雨中の虎」嘉永2年(1849)太田記念美術館蔵

 

本作は、一幅の作品であると考えられていましたが、2005年にフランス国立ギメ東洋美術館が所蔵する「龍図」と対であることが判明しました。確かに、虎の視線の先に龍がいると画面の構成は一段と引き締まるように見えます。

 

 

浮世絵界のスターたちの生の筆づかいが見られるチャンスです。お見逃しなく。

 

information

会場名:太田記念美術館

展覧会名:開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展 ―歌麿・北斎・応為

会期:2020.01.11〜02.09

開館時間:10:30〜17:30(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(1/13は開館)、1/14(火)

料金:一般700円、大高生500円、中学生以下無料

展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/6789/

 

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Editor  静居 絵里菜

【編集後記】展示室を埋め尽くす肉筆画に圧倒されました!絵師による筆特有のなめらかな動きが見られるので、ぜひ足を運んでみてください。

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