Be-dan
2020.1.6
東京・原宿にある「太田記念美術館」。同館の主席学芸員・日野原健司さんに、所蔵作品や作品の魅力についてお聞きしました!
―まずは「太田記念美術館」について簡単に教えていただけますか?
当館は、浮世絵の展示を専門に行っている美術館です。毎年多くの展覧会を、1年に平均8本~9本開催しています。
―非常に充実していますね! なぜそんなに多く展覧会を開催しているのですか?
浮世絵は、光で退色しやすいため、保存の関係上、基本的に毎月展示替えをしなければなりません。そのため、展覧会の本数も他の美術館より多いです。
―太田記念美術館は「日本三大浮世絵コレクション」とも言われていますよね。どれくらいの作品を所蔵されていますか?
現在、約14,000点を所蔵しています。保存状態が良く美しい名品もあれば、状態が悪くて美術ファンにはお見せしづらい作品など、5段階のランクに分けて管理をしています。展覧会を企画する際、毎回1点1点しっかり状態をチェックしています。
―ちなみに、どんな浮世絵を所蔵されているのですか?
幅広いジャンルを、まんべんなく所蔵しています。そうはいっても、ある程度時代の好みを反映したコレクションになっていることが面白いですね。
当館のコレクションを築いた五代太田清藏は、大正・昭和時代に浮世絵を趣味で収集しはじめました。美人画や歌川広重の風景画は、当時から非常に人気が高く、当館のコレクションの多くを占めています。一方で、武者絵や妖怪を描いた歌川国芳など、最近人気の作品は、ほとんど所蔵されていません。
葛飾応為「吉原格子先之図」太田記念美術館蔵(「開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展」(1/11〜2/9)で展示)
―意外ですね! なぜ、収蔵作品に差が出たのでしょうか?
おそらく個人の趣味というよりは、当時の価値観を反映した結果ですね。歌川国芳の「妖怪絵」は当時、評価が低く、
―なるほど。では、その数ある浮世絵の中でも「代表作はコレ!」という作品はありますか?
1点というと難しいのですが、当館は「肉筆画」のコレクションが多いのが特色です。大体700点くらい所蔵しています。肉筆画というのは、絵師が紙や絹に直接描いた1点ものの作品です。木版画で大量に摺られた浮世絵と違い、肉筆画はレア度が高く、値段も浮世絵より高額です。ぜひ版画だけでなく当館の「肉筆画」コレクションにも注目してみてくださいね。
太田記念美術館 内観 写真提供:太田記念美術館
幅広いジャンルの浮世絵を所蔵する太田記念美術館。2020年1月に開館40周年を迎えます。
次回は、日野原学芸員が「美術の道」を志したキッカケについてをお聞きします。来週もお楽しみに!
(第2回へ続く)
information
開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展―歌麿・北斎・応為
会場:太田記念美術館
会期:2020.01.11〜02.09
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/6789/
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 静居 絵里菜
OBIKAKE編集部所属。