Be-dan
2021.1.11
今月のBe-danは、日本女子大学でフランスの服飾史や服飾文化の研究をしている内村理奈准教授にインタビュー!
第1回では、内村先生の普段のご研究や、服飾史を研究しようと思ったキッカケなどをお聞きしました。
つづく第2回は、フランス服飾文化の魅力や、フランスでおすすめの美術館など!フランストークをお届けします。
(第1回はコチラ)
内村理奈先生 ※撮影時のみ、マスクを外していただきました。
―17~19世紀のフランス服飾文化の特徴とは、なんでしょうか?
あえて言えば、華やかなだけでなく軽やかな雰囲気でしょうか。決して重くない。
フランスは外国のいい文化をどんどん取り入れていったのですが、フランス風になったものには心地よい軽やかさを感じます。
―今まで出会ったなかで、先生が特にお好きなファッションはありますか?
18世紀ロココの華やかで可憐なドレスはとても好きですが、ファッションの形よりも、職人の技術や技法に感動することが多いです。
17世紀に最高峰と言われていたヴェネツィアのレースなどは、今では再現ができないと言われています。
電気のない時代に、レースも刺しゅうも織りも、とんでもないほど繊細なものを人の手で作りあげていました。
―今の技術でも、再現が難しいのですか?
当時と同じ材料や道具が手に入るとは限らないし、何より、職人の技術も文章化されていません。
昔より今のほうが技術は進んでいるように思えますが、本当は失われた技術のほうが多いのかもしれません。
しかも、どんなに超絶技巧のものでも、作った人の名前は残っていないという……。
だからこそ、宝石よりも価値があるほどのレースを見たりすると、それを作った職人たちのことが浮かんできて、胸が熱くなります。
―お話を伺っていると、先生のフランスや服飾文化への愛がすごく伝わってきます。フランスの服飾関連で、素敵だなと思った場所があれば教えてください!
いっぱいありますよ。まず挙げるのなら、私が留学していたリヨン。地方都市で、パリとは違った素晴らしさがあります。
街並みも食べ物も素晴らしいのですが、何より絹織物の街なんです。エルメスのスカーフの染めもリヨンで行っているんですよ。
―そうなんですね。昔から絹織物が有名だったんですか?
特にルイ14世の時代に、リヨンの絹織物が国を挙げて奨励されて……つまり、17世紀以降の華やかなファッションはこの町が支えていたと言えます。
ベルサイユ宮殿の壁や調度品も、使われる布は全部リヨンの絹織物でした。当時の織機はきちんと残っていて、今でもベルサイユ宮殿の絹を修復するときに使われています。
あと、リヨンには絹織物の美術館があって、そこがまた素晴らしくて!
―絹織物の美術館、素敵ですね! そうした服飾関係のミュージアムは、他にもあるのでしょうか?
たくさんありますよ。パリには、モードの美術館がふたつあります。それから、18世紀にレースの産地だったアランソンにはレースのミュージアムがあって、去年訪れました。
ベルサイユ近郊のジュイにある、トワル・ド・ジュイ(インド更紗を元にしたフランスの布地)のミュージアムも素敵ですよ。
これから行ってみたいのは、南西部の町、画家ロートレックの生まれたアルビにある、
ドレスに関しては、展覧会によりますが、たとえば、パリ装飾芸術美術館で17~18世紀にフォーカスした展覧会があれば、必ず素敵なものが見られるはずです。
―日本でもそうした服飾が見られたらいいのですが……。
日本なら、やはり神戸ファッション美術館でしょうか。貴重な収蔵品を活用したコレクション展示で、美しいドレスを見ることができます。
美術館ではないのですが、京都服飾文化研究財団はギャラリー展でいろいろな服飾を見せてくれます。17~18世紀のドレスを展示することもあるので、タイミングが合えばぜひ!
現代のファッションに関しては、島根県立石見美術館もおすすめです。建物も好きなんです。
東京なら、文化学園服飾博物館でしょうか。学生さんが勉強できるように気を配っているので、説明がとても丁寧です。
おすすめの美術館をたくさん教えていただきました。絹織物の美術館、ぜひ行ってみたい!
第3回では、さらにジャンルを広げて、服飾以外に内村先生がお好きなものについてお聞きします。お楽しみに!
(第3回につづく)
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Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。
Writer | ニシ
美術と日本文化に癒しを求めるライター。記事とシナリオの間で反復横跳びしながら、何らかの文章を日々生産している。