Be-dan
2020.1.27
太田記念美術館の主席学芸員・日野原健司さん。前回のインタビューでは、浮世絵の鑑賞方法についてお聞きしました。最終回では、浮世絵のとっておきの楽しみ方を教えてもらいます!
―浮世絵を鑑賞する時のポイントはありますか?
美人画の「髪」に注目してみてください。日本の伝統的な髪型である「髷(まげ)」には、年齢や身分によってかたちがあります。
喜多川歌麿「五人美人愛敬競 松葉屋喜瀬川」(太田記念美術館蔵)
こちらの女性は、かんざしをたくさん挿していることからもわかるように、身分は遊女です。髷のかたちは「島田髷(しまだまげ)」で、もっとも一般的な女性の髪型です。江戸初期に東海道島田宿の遊女の髪型から広まったとされています。
当時の女性にとって髪は、美しさを見せるための重要なポイントでした。そのため、絵師たちも髪の生え際を0.1ミリ単位で表現し、こだわりを示しています。
―当時の女性たちが「髪」にこだわっていたことを初めて知りました!
浮世絵鑑賞の際はぜひ「髪」に注目して、そのこだわりをチェックしてみてください。また髷を固定し、美しく見せるための「くし」や「かんざし」などさまざまなアクセサリーや、人によって髷のかたちが違っていることがわかってくると思います。確実に顔よりは見分けがつくと思います。
―浮世絵の表情はすべて同じに見えます。どうしてですか?
瓜実顔(うりざねがお)と呼ばれる細長い顔と、切れ長の目、スッと通った鼻筋が、当時の人たちにとって「美人」に対する共通イメージだったからです。これは浮世絵だけではなく、現代の漫画のキャラクターでもいえます。70年代から現代まで10年ごとに並べてみると、顔の描写や表現の仕方に明らかな変化が見られます。流行りの顔があるのです。
―浮世絵についてもっと学びたい人に、オススメの勉強法はありますか?
図書館や書店で、自分にあった浮世絵の書籍をたくさん読んでみてください。ここ10年で入門書が充実してきましたし、それ以外でもかわいい動物や妖怪などを紹介した楽しい本が出ています。
当館監修の本で、浮世絵の魅力を日本人だけではなく、日本文化に興味ある外国人にも紹介する英訳付きの「ようこそ浮世絵の世界へ」(東京美術 2015年)があります。簡単な鑑賞のポイントをまとめたもので、英語の勉強にもオススメです。書店にはもちろん、当館の受付でも販売しています。ぜひ手に取ってみてください。
書籍で浮世絵になじんだところで、実際に展覧会に足を運び、気になる作家やテーマがあれば、またそこから書籍などで勉強してみると良いと思います。
―ご自身の浮世絵の見方は変わりましたか?
研究による知識が増えてきたことで、段々と変わってきました。急激にブームが変わるわけではないですが、たとえば「今は北斎が人気だな」など、浮世絵マニアの間でもトレンドの変化を感じます。
いかがでしたか?お話を通して、より深く浮世絵の魅力に気がつくことができました。今度、じっくりと太田記念美術館の展示を楽しんでみたいと思います!
information
開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展―歌麿・北斎・応為
会場:太田記念美術館
会期:2020.01.11〜02.09
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/6789/
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 静居 絵里菜
OBIKAKE編集部所属。