Be-dan
2020.2.24
東京都現代美術館の美術図書室の司書・岩田さんへのインタビュー。あっという間に最終回になりました。美術専門書の司書として10年以上働いている岩田さんに、美術書の楽しみ方や、個人的なオススメ図書を教えていただきました!
―最近、本離れが進んでいると言われていますよね。そんな人に、美術図書室でのオススメの読書の入り方はありますか?
たとえば展覧会カタログなど、作品を大きな図版でみると、より作品の魅力をストレートに感じることができると思うんです。美術書は内容だけでなく、デザインや紙などもデザイナーやアーティストの想いが込められているので、作品を楽しむように味わえるのも醍醐味ですよ。また、図書室など本が沢山ある場所には、「本との偶然の出会い」というものがあって、それはインターネットでは得られないものだと思いますね。
―ここに来て、気になるような本があればどんどん読んでほしいということですね。
そうですね。書籍の後ろにはたいてい参考文献も載っていますので、それを手がかりにして今度は違う本を読んでみようとか、どんどん興味がつながっていくのではないかなと思います。
―最後に、岩田さんのオススメ図書を教えてください。
まず、一般向けの本だと『現代アートの舞台裏』です。
海外の現代アートの現場の事情がわかるので、とても面白いです。海外の美術賞やオークション、画商の話がエッセイのように書かれていて、わかりやすいのでオススメです!
―面白そうですね! では、子ども向けの本で何かオススメはありますか?
何冊かありますが、まず大竹伸朗さん作の『ジャリおじさん』です。大竹さんは、当館の収蔵作家でもある方なのですが、絵も個性的ですし、内容がとってもナンセンスでいかにも子供が喜びそうな本なんです。ジャリおじさんというのが、口調が語尾に「なんとかジャリ」とつけるキャラクターで、口に出して読むだけでとっても楽しい本です。大竹さんの作品を見てから、こちらを読まれると、より魅力が広がるのではないかなと思います。
―『まるのおうさま』はどんな絵本ですか?
絵をグラフィックデザイナーの粟津潔(あわづ きよし)さんが、文章を谷川俊太郎さんが担当された本なんですが、私が子どもの頃読んでいた思い出の一冊なんです。1970年代からロングセラーとして読みつがれてきて、最近復刊されてすごく嬉しかったです。配色なども時代を感じさせるのですが、美術の知識がなくても、シンプルに絵と内容が面白いんです。今、大人が読んでみても新鮮な気持ちでイマジネーションを広げて楽しめるんじゃないかなと思います。
―子どもの本でも、すごく力を入れて作っているというのが、両方の本でよくわかりますね。何十年も読みつがれるロングセラーは、読み応えがありますよね。
そうですね。こういう良書が「こどもとしょしつ」にまだまだいっぱいあります。大人になってからもう一度読み返してみると、新しい発見があって面白いと思います。そういえばこういう作品があったな~など、懐かしさも感じられますよ!
―今度じっくりと美術図書室を満喫してみたいと思います! ありがとうございました!
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。