Be-dan
2020.3.6
今話題の展覧会、「ハマスホイとデンマーク絵画」。展示をていねいに見ていくと、「ヒュゲ」というキーワードを度々目にすると思います。
第3回では、デンマーク人が大切にしているこの「ヒュゲ」について、企画監修をされた山口県立美術館の萬屋学芸員に解説していただきました!
(第2回はコチラ)
―今回の展覧会では、たびたび「ヒュゲ」というキーワードが登場しますよね。これについて教えていただけますか?
「ヒュゲ」はデンマーク語で「Hygge」と書きます。19世紀頃からデンマークで独自に使われている言葉で、一般的には「くつろいだ」とか「心地よい」と訳されることが多いですね。
―最近、日本でも北欧のライフスタイルが注目されるようになってよく聞くようになりましたよね。具体的に「ヒュゲ」なシチュエーションってどんなイメージでしょうか?
この「ヒュゲ」が意味するものは時代や個人によっても結構違うので、一概にこれが「ヒュゲ」だ! と言えない言葉なんです。ただ個人的な経験から、どんなシチュエーションに「ヒュゲ」を感じることが多いのか、いくつか欠かせない環境や条件を挙げてみますね。
たとえば、①自分が馴染んだ空間、②明るすぎない室内環境、③暑すぎず、寒すぎない快適な室内温度、④静けさ、⑤親しい人と一緒にいる空間、⑥美味しい食事、飲み物といった感じでしょうか。
―それって、自宅で友人や家族とカジュアルなホームパーティなどをやるような時の状態に近いものですか?
そうですね。身近で大切な人と一緒に快適な時間・空間を過ごす時、「ヒュゲ」を感じるんじゃないかなと思います。友達が家に来る時に、ちょっといいワインを用意したりとか、お花を飾ってみたりとか、「ヒュゲ」は誰かを大切にする気持ちと非常に強く結びついているもののように思います。
―展覧会では、「ヒュゲ」な雰囲気が感じられる作品はありますか?
現代のデンマーク人が、これは「ヒュゲ」だなと強く感じるであろう作品は、第2章の「スケーイン派」の作品ですね。
ミケール・アンガ《ボートを漕ぎ出す漁師たち》1881年 スケーイン美術館
展覧会では第2章でまとめて紹介しているんですが、19世紀末にユラン半島の最北端にある漁師町スケーインで芸術家村を作って、そこで活動した芸術家達がスケーイン派と呼ばれています。彼らは、当時最先端だった印象派風の表現を取り入れたりしながら、地元の漁師達の姿や、画家仲間の姿を非常にいきいきと描き出していきました。この時に彼らが描いた作品は、身近な友人との朝食風景だったり、夏の夕暮れの浜辺を散歩している情景であったり、クリスマスを家族で祝って楽しい時間を過ごしたりと、非常に「ヒュゲ」なものなんです。
ピーザ・スィヴェリーン・クロイア『朝食―画家とその妻マリーイ、作家のオト・ベンソン』ヒアシュプロング・コレクション
第2章のスケーイン派の作品を見ながら、「ヒュゲ」ってこんな感じなのかな?と想像しながら絵画を楽しんでいただければと思いますね。デンマーク特有の感覚「ヒュゲ」を体感するためにも、ぜひ「ハマスホイとデンマーク絵画」展をチェックしてみてくださいね!
(第4回につづく)
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。
「ハマスホイとデンマーク絵画」取材レポートはコチラ!