Be-dan

彫刻家・瀬戸優さんがむかえた大きな転機&作品の魅力とは?(3/4)

2020.8.17

今月のBe-danは、若手彫刻家・瀬戸優さんにインタビュー!

大学在学中から、SNSがきっかけで作品が知られるようになった瀬戸さん(第1回より)。第3回では、そんな瀬戸さんのアーティスト活動の大きな転機となったエピソードをお聞きしました。

(第2回はコチラ

 

彫刻家 瀬戸優さん インタビュー

 

―大学院に進学されて、卒業後もアーティスト活動だけでやっていこう、と決意されたのはいつ頃ですか?

何かきっかけや転機はありましたか?

 

大学院の1年生の時から、個人事業主の開業届は出していましたし、大学院2年間の学費は大学から免除されていたので、すでに親からの支援はほとんどなしで自立できていました。大きな作品は大学で作っていましたが、自分のアトリエも構えて制作活動をしていました。

2019年3月、アートフェア東京という、音楽フェスで言ったらフジロックのような、大きな催事で個展をやらせてもらいました。その時に、もし失敗したら諦めて就職しようと考えていましたが、ありがたいことに、即完売で。

 

『アートフェア東京』での展示の様子(瀬戸さんの公式ホームページより)

 

―すごいですね!

 

辞めるわけにいかないな、と(笑) この時に覚悟を決めました。

 

―アートフェア東京の個展をされるまでに、不安とか怖さはなかったですか?

 

もちろん怖かったですよ! キャリア的にも駆け出しですし、学生で個展なんて、ほとんどいないと思います。

『アートフェア東京』に出たことで、彫刻家としてポンっとレベルアップできた感覚がありましたね。

 

藝大生は、“早くアーティストとしてやっていきたい!”という方が多いイメージでした。

 

意外とそんなこともなく、人それぞれですね。だから僕は、変わり者だったと思います。

SNSで話題となり、美術専門雑誌の表紙も飾った、卒業制作の作品(瀬戸さんの公式ホームページより)

 

―ストイックにご自身の道を進まれたのですね!

ところで、彫刻の素材の中でも、粘土(テラコッタ)を中心に扱う理由は何ですか?

 

彫刻は主に、石・木・粘土・金属の4種類の素材があって、それぞれに特性がありますが、一番の違いは形になるスピードですね。例えば、手のひらサイズのリンゴを、4種類それぞれの素材で僕が作ったら、石なら頑張って8~10時間くらい。木だと5~6時間。金属はいろんな作り方があるのでひとまとめには言えないですが、粘土だったら、15分~20分くらいなんです。

 

彫刻家はそれぞれ、“1つの作品にかける、精神状態のバランスが心地いい時間”があって、僕の場合、造形のスピード感や荒々しいところが残るからこそ、動物の生命感が出るのかなと思っています。はじめは木彫もやっていましたが、僕の表現には向かず、動物を作るならテラコッタだな、と。素材選びは本当に大切で、日本画か油絵か、くらい全く違うんです。

 

―なるほど。作家ならではの視点や感覚ですね。

 

あと、僕は自然科学をテーマにしているので、動物だけではなく、水や重力など、科学的なワードも大事にしています。粘土は大地そのものですから、それを使うことには意味があるなあ、と。あと、自分の指の跡がすごく残ることも。

 

《水源-ワシミミズク-》テラコッタ、彩色、玉眼2020  (瀬戸さんのInstagramより)

 

―確かに瀬戸さんの手で作っている感じが、作品にしっかり残りますね。

 

毛の一本一本まで緻密に、というリアリティとは少し違う生命感というか。

自分にしかできない表現を探しているうちに、今のスタイルになりました。

 

―リアリティといえば、玉眼(ガラスでできた瞳)が入ると、ぐっと生命感が出ますよね。

 

全然違いますよね。玉眼は元々、仏像を作るときの木彫の技法ですが、木彫から移行したとき、粘土でもできるだろうなと思って、最初から入れようとしていました。実はテラコッタに玉眼を合わせる人っていないんですよ、日本でも世界でも。

 

玉眼を制作する瀬戸さん(瀬戸さんの公式ホームページより)

 

―はい!見たことないですし、とても素敵です。焼いた後に入れるから、難しいんでしょうか。

 

そうですね、焼くと縮むので、技術的に難しいです。

 

7月に開催された東京での個展より

 

―『アートフェア東京』という大舞台でチャンスを掴み、彫刻家として飛躍した瀬戸さん。素材と表現のオリジナリティを探る話も興味深かったですね。魅力的な作品の数々は、ぜひ瀬戸さんのインスタグラム(https://www.instagram.com/yu_seto1222/ )でご覧ください。

 

さて、次回は最終回。普段の制作についてや、これからの夢・やりたいことなどをお聞きします。お楽しみに!

第4回につづく)

 

 

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Editor | 三輪 穂乃香

OBIKAKE編集部所属。

 

Writer | naomi

採用PR・企業広報職、Webメディアのディレクターなどを経て、アート&デザインライターに。
作品と同じくらい魅力的な、作家の人となり・ストーリーも伝えたくて書いてます。
好きなもの・興味関心と守備範囲は、古代文明からエモテクのロボットまでボーダーレスです。

note  https://note.com/naomin_0506

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