Be-dan

アート系マンガ家・にしうら染さんが選ぶ、好きな西洋絵画&美術館って?(3/4)

2020.6.15

今月のBe-danは、アート系マンガ家のにしうら染(そめ)さんにインタビュー!

印象派画家クロード・モネが主人公のマンガ『モネのキッチン』などを手掛けています。

第3回では、これまで多くのアートにふれてきたにしうらさんが選ぶ、印象に残っている美術館や絵画作品について、また、昨年滞在されたフランスでの思い出についてお聞きします!

第1回第2回

 

にしうら染さん インタビュー

にしうらさんが昨年訪れたマルロー美術館(フランス)。モネの師・ブーダンの絵がズラリ!

 

―にしうらさんが、特にお好きな絵画作品をいくつか教えてください。たくさんあって選べないかもしれませんが(笑)。

 

そうですね、とても悩ましい質問ですが(笑)、2つご紹介します。

まず、印象派の女性画家、ベルト・モリゾが44歳頃に描いた自画像です。

モリゾというとよく知られているのは、エドゥアール・マネが描いた≪すみれの花束をつけたベルト・モリゾ≫という肖像画ですが、そのモデルとなった女性なんです。

 

にしうら染さん インタビュー

にしうらさん私物のポストカードより、エドゥアール・マネ《すみれの花束をつけたベルト・モリゾ》1872年

 

―にしうらさんのマンガ『モネのキッチン』にも登場する女性ですね!

 

はい! 作品にも描きましたが、19世紀当時、“女性は家庭に入るべき”という風潮が強かった中で、彼女は幼い頃にたしなみとして勉強し始めた絵画がすごく好きで、プロの画家としてやっていくと決めるんです。のちに自分の画家活動を応援してくれる人(エドゥアール・マネの弟)と結婚し子どもも生まれます。

そして54歳で亡くなる直前まで、彼女は画家として絵を描き続けました。女性に対する社会的な制約が厳しかった中で、自分のしたいことを貫き続けた姿が強くてかっこいいなあと、学生の頃からずっと憧れていますね。

 

にしうら染さん インタビュー

にしうらさん私物のポストカードより、ベルト・モリゾ《自画像》1885年

 

当時、女性はモデルとして“見られる存在”でした。女性画家の自画像も、手には絵筆を持ちつつも華やかなドレスを着て、優しく微笑み、ポーズをとっているものが大半でした。

でも、この自画像のモリゾは真剣な表情で、きりっと前を見つめています。「わたしはモデルではなく、ひとりの画家なんだ」という彼女の自信と決意が見えるようで、とても好きです。実はこの自画像の本物を鑑賞したくて、昨年オルセー美術館で行われたベルト・モリゾ展の日程に合わせて、フランスに行きました!

 

―そうだったんですね。ベルト・モリゾ、とても素敵な女性ですね。

 

はい。そしてもうひとつは、やはりモネの≪日を浴びるポプラ並木≫です(第1回に登場)。自分の幼い頃の記憶に残っている絵です。やっぱり黄緑色と青の鮮やかさに心を掴まれる感じで、理屈ではなく本当に感覚的に好きですね。

国立西洋美術館の常設展にありますので、ぜひ観に行ってみてください!

にしうら染さん インタビュー

クロード・モネ《陽を浴びるポプラ並木》1891年 国立西洋美術館蔵

 

 

―つづいて、美術館や博物館の中で、印象に残っている館をお聞かせください。これも絞るのが難しいと思うんですけれども(笑)。

 

印象に残っているのは、ル・アーヴルという、フランス北部・ノルマンディ地方の港街にある、マルロー美術館ですね。ここも昨年、フランスを旅した時に訪れました。

ル・アーヴルの街は、モネが5歳から19歳くらいまで育ったところなんです。そしてモネが油絵を描くきっかけになった、ウジェーヌ・ブーダンという画家と出会った場所でもあるんですよ。

 

にしうら染さん インタビュー

フランス、ル・アーヴルにある、マルロー美術館。外観も美しいですね!

 

パリだけでなくノルマンディの方まで足を伸ばしたんですね!

 

はい。モネの描いた風景を観たくて、列車を使って3泊4日で巡りました。モネが住んでいたヴェトゥイユという村、大聖堂が有名なルーアン、モネの家と庭が残っているジヴェルニー、と(笑)。

 

―まさに、モネを追いかける旅ですね(笑)

 

そうですね、好きすぎて追いかけてしまいました(笑)。

マルロー美術館は海のすぐ近くに建っているんです。館内でモネやブーダンが描いた海の絵を見た後に外に出ると、目の前に彼らが描いた風景が広がっている、という体験は本当に最高でした!このノルマンディへの列車旅も、今後、旅行記マンガとしてまとめたいと思っています。

 

―出版されたらぜひ購入します!楽しみにしています。

にしうら染さん インタビュー

最新作『フランスふらふら一人旅 パリ・アパルトマン生活編』

 

にしうらさんが1か月弱滞在されたフランス旅の旅行記は、美術館編と、アパルトマン編の2作品のラインナップ。ぜひ手に取ってみてくださいね!

・美術館編(https://nsur.booth.pm/items/1820994)※発売中

・アパルトマン編(https://nsur.booth.pm/items/2060004)※6/18頃から予約開始、発送は6/27〜の予定

 

さて、次回は最終回。印象派や西洋絵画を愛するにしうらさんに、その魅力やアート初心者にオススメの美術館、作品の楽しみ方をお聞きします。お楽しみに!

第4回につづく)

 

にしうら染 

サイト: http://sen.hiho.jp/sensyoku/
Twitter: https://twitter.com/_some

 

 

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Editor | 三輪 穂乃香

OBIKAKE編集部所属。

 

Writer | naomi

採用PR・企業広報職、Webメディアのディレクターなどを経て、アート&デザインライターに。
作品と同じくらい魅力的な、作家の人となり・ストーリーも伝えたくて書いてます。
好きなもの・興味関心と守備範囲は、古代文明からエモテクのロボットまでボーダーレスです。

note  https://note.com/naomin_0506

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