Be-dan
2019.7.1
社会人として数年間働いた後、突如思い立って海外へと留学。イタリアの美術大学で7年間の油絵と美術史を学び、帰国後出版した美術史入門書『イラストで読む美術』シリーズがたくさんの美術ファンから支持を得ているという、異色の経歴をお持ちの作家・杉全美帆子(すぎまたみほこ)さん。「Be-dan」第4回では、最新作『イラストで読む 旧約聖書の物語と絵画』を発売したばかりの杉全さんにアートや美術展の楽しみ方をお聞きしてきました!
【第1回:アートを楽しむ切り口を教えてください。 】
―まずは最新刊『イラストで読む 旧約聖書の物語と絵画』の刊行、おめでとうございます。
東京新聞で連載されている美術館訪問記「おとなのための美探訪」や、個人ブログ(http://sugimatamihoko.cocolog-nifty.com/blog/)なども読ませていただきましたが、杉全さんのイラスト解説は感情表現も豊かで本当にわかりやすいです!
「イラストで読む 旧約聖書の物語と絵画」
ありがとうございます。美術史は奥が深くて、私自身もまだまだ学んでいる最中なので、勉強して「えーっ」と思った素直な感動や驚きが読者の方々にも伝わるよう心がけています。
例えば、先日東京新聞で特集したモネについても、死後一時期忘れられてしまったどころか、むしろ批判されていた時代があったなんて知らなくて。すごくびっくりしたので、その時の自分自身の新鮮な驚きをイラストで表現しました。生前に成功を収めてからはずっと評価が高い巨匠なんだろうなと思い込んでいたので、これを知ったときは本当に驚きでしたね。
―美術館取材でも、独自の視点をお持ちですよね。あまり他の人が注目しない意外な人物を取り上げられたりして・・・。
実は私、絵を観るのも好きなんですけど、画家の人生そのものや、画家の友人、画家を支えた人たちなど、生きた時代をひっくるめて見るのが大好きで、一旦調べ始めるとどんどん深みにはまってしまうんです。なので、気になったら絵や画家そっちのけでのめりこんでいったりします。
先日も東京都美術館の設立に貢献した、佐藤慶太郎という人物を調べていたらとんでもない方向にはまりこんでしまって。この方はもともと石炭商からスタートし、海の荒くれ者が集まる沖仲仕(おきなかし)という港湾労働の人々と共に働き「石炭の神様」と呼ばれるまでに成功を収めた人物なのですが、冲仲仕ってどんな仕事だったんだろうって調べているうちに、高倉健が沖仲仕を演じている任侠映画にハマっちゃって。任侠映画を見まくっていたら、娘から「お母さん、何してるの?」って言われて「はっ」となったりして(笑)。でも、こうやってアートを切り口として深く調べていくと、今まで全く無縁だった世界に興味が持てたりと、おもしろいことがたくさんあるんです。
東京新聞2018年12月11日掲載「おとなのための美探訪 東京都美術館」より
―他には、アートを楽しむ切り口ってありますか?
そうですね。以前、母校でイタリアへ研修旅行に行く高校生向けに講演をしたのですが、せっかくだから現地でしか見られない建物や壁画をしっかり見てくるといいよとアドバイスしてきました。絵画はひょっとしたら自分が生きているうちに来日するかもしれませんが、建物や壁画は大概その場所から動かしようがないですからね。自分から現地に見に行くしかないものですし、大きさや空間など本やインターネットでは得られにくい「体験」ができますから。
いかがでしたでしょうか?第1回は杉全美帆子さんの近況のお仕事に着目しながら、杉全さん独自のアートの楽しみ方を教えていただきました。
続く第2回では、インタビュー最後で出た「イタリア」に着目し、杉全さんのユニークなイタリア留学時代についてお話を聞いていきます!
杉全 美帆子(すぎまた みほこ)
作家・イラストレーター
女子美術大学、イタリアのアカデミア・ディ・
(第2回に続く)
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東京都写真美術館 学芸員・桝田言葉さん
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 松栄 美海
OBIKAKE編集部。学生時代は美大で彫刻を学ぶ。IT企業を経て昨年9月よりWEB担当として入社。
OBIKAKEの立ち上げを担当。編集や撮影について日々勉強中。