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桝田言葉さんが美術館学芸員を目指した理由とは?
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2019.8.12

「オフの日でも美術館のことを考えない日はありません」

そう言い切った、東京都写真美術館の学芸員・桝田言葉さん。「美術館で学芸員として働きたい」という長年の目標をかなえ、2019年1月から同館の学芸員として日々奮闘中です。

第1回では、桝田さんが初めて企画を担当した「TOPコレクション イメージを読む 写真の時間」の見どころについて詳しくお聞きしました。

第2回では、新人学芸員として1年目から大活躍されている桝田さんに、これまでの経験や学芸員としての働き方についてたっぷり語っていただきました! 

東京都写真美術館学芸員・桝田言葉さん

 

 

 

桝田さんは美術館の学芸員になることをひとつの目標としていたそうですね? 

 

学芸員を目指しつつ、大学でも学部・修士と西洋美術史を専門に研究していました。学芸員の資格は大学在学中に取得して、卒業後はインターンシップやアルバイトなど、様々なかたちで美術館やギャラリーの仕事に関わっていました。そんなふうにしながら学芸員として働けるチャンスを模索していたところ、ちょうど東京都写真美術館で学芸員募集があったので、応募しました。そして、今年の1月から念願の学芸員として働いています!

 

―東京都写真美術館の学芸員を目指したきっかけはありますか?

 

まず、大学時代の研究テーマが、画家・ムンクについての研究だったことがあります。ムンクの作品では、≪叫び≫が非常に有名ですが、作品のイメージソースとして、彼は自分自身で撮った写真や映像を活用していたんです。ムンクは1863年生まれで、1902年にカメラを入手して、使っていました。このように、研究の中でムンク作品における「写真」の影響について深く知っていくうちに、「写真」への興味が広がっていきました。

桝田さん登場回の東京都写真美術館ニュース別冊「ニァイズ vol.103」

 

 

 

―全く別ジャンルに思える研究テーマを通して、「写真」への興味がそんなふうに広がるのですね! 元々は、写真は研究されていなかったのですか?

 

そうですね。東京都写真美術館に来るまでは暗室で作業したことがなかったんです。

写真の現像作業については全くの初心者だったので、昔ながらの白黒の「モノクロ銀塩プリント」の現像作業は新鮮な体験でした。引き伸ばし機や薬品などで一通りの作業をしましたが、暗室の暗さやフィルムの繊細さなど「写真」というものの奥深さには驚きました

 

―確かに、暗室って真っ暗なイメージがあります。

 

そうですよね。それから、現像の手順はとても繊細で、部分的に印画紙への露光を調整する手法があるのですが、プリントを焼く時に、ここだけ濃くしたい、ここだけ光を当てないようにしたいという時に、一部分だけ隠して数秒間追加で光を当てる・・・という作業をするんです。たった1秒の差で画面のコントラストの濃淡など写真の印象が全く変わっていくのですが、普段の生活では1秒や2秒、10秒といった時間って全然意識することがないだけに、写真を現像するわずか数秒間がとても長く感じられたんです。

この体験は、今回の「TOPコレクション イメージを読む 写真の時間」の着想源のひとつになっています。

 

―学芸員のお仕事で、他には何をされていますか?

 

展覧会の企画の他に、教育普及プログラムの担当をしています。

制作体験のプログラムや対話をしながら作品を鑑賞するものなど、写真・映像・美術により親しんでいただけるようなきっかけづくりを日々行っています。

 

―それは面白そうです! 教育普及担当をしている中で、大変なことはありますか?

 

担当学芸員だけでは手が足りない時ですね。

ワークショップやスクールプログラムなどは、開催数や参加校も多いんです。

東京都写真美術館では、毎年プログラムをサポートいただけるボランティア募集をしています。

1回につき小学生が60人来るなんてこともあるので、そこによりきめ細やかに対応できたらと思います。

やはりボランティアによるサポートは欠かせません!

 

―美術館と関わるまたとない機会ですね!

 

もし学芸員になりたい、美術館に関わりたい方がいれば、ボランティアに入っていただいてとにかく色々経験してみるのもおすすめです。

私もアルバイトやインターンなどを積み重ねていくうちに、美術館への関わり方は多様にあると知りました。

色んな方々の助けがあって美術館は成り立っていますからね!

 

第2回、いかがでしたでしょうか?

第3回では、東京都写真美術館の所蔵品の保存や管理の方法など、普段は聞けないお話をさらに詳しくお聞きしていきます!

第3回につづく)

 

東京都写真美術館

8/10~11/4 「TOPコレクション イメージを読む 写真の時間」

公式ホームぺージ:https://topmuseum.jp/

 

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「Diginner Gallery Workshop」オーナー・鈴木宏信さん

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國學院大學博物館広報・佐々木理良さん

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Writer | 齋藤 久嗣

脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。

首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive

 

 

Editor | 三輪 穂乃香

OBIKAKE編集部所属。のんびりやってます。

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