Be-dan
2020.8.3
今月のBe-danは、大注目の若手彫刻家・瀬戸 優さんにインタビュー!
東京と京都での個展を大盛況で終えたばかりの瀬戸さん。主にテラコッタ(粘土)を用いて、表情豊かで今にも動き出しそうな野生動物の彫刻を手がけています。
第1回では、大学在学中から今につながる、“アーティスト活動のはじまり”をお聞きしました。
彫刻家・瀬戸 優さん
―さっそくですが、今の瀬戸さんの、“アーティスト活動の原点”をお聞かせください。
そうですね・・・僕、もともとは就職希望だったんです。
―え!そうなんですか!
はい。両親とも企業勤めで、“男は一家の大黒柱として稼げ”と、子どもの頃から言われて育ちました。美大に進学するのはまだしも、フリーランスのような不安定な道は絶対に許されないような家庭だったので、頭にもなくて(笑)。
だから美大に入ったときも、“美術を活かした何かの仕事に就く”という職業意識が、とても強かったです。
―なるほど。では、どんなきっかけが?
在学していた東京藝術大学の彫刻科のカリキュラムでは、1年生の最初の頃はずっと基礎的な実習を重ねていくんです。例えば木彫ならカンナをかける練習から、粘土なら人の顔や全身像を作る、とか。なので、自分が作りたいもの、自由制作ができなくて。でも大学じゃないと、彫刻ができる場所もないのでもどかしくて。
家ではずっと、好きだった動物をペンでスケッチしていました。そのペン画を、1日1枚描いてTwitterに載せることを日課にしていたんです。
ペン画作品(瀬戸さんのホームページより)
―そうなんですね!とても素敵です!
本当に自分の基礎力向上のために続けていたんですが、どんどんTwitterのフォロワー数が伸びていきました。
そしてある日、「その絵を売ってくれませんか?」とメッセージが来たんです。そこで初めて、”絵って売れるんだ!”って。本当に驚きました。
―すごいですね!それは2年生くらいの時ですか?
1年生の終わりくらいだったと思います。
「価格は決めてください」と言われたのですが、絵画科じゃないから相場もわからないし、自分で絵を買ったことももちろんないですし。それで、だいたいの制作時間から、アルバイトの時給の感覚で価格を決めて。それがだんだん増えていきました。
―そのやりとりは全てTwitter上で?
はい、Twitterです。最初に決めた価格で、5枚から8枚くらい売れたのかな。それで少し値上げしましたが、それでもたくさん売れていきました。
そのうちフォロワーがどんどん増えていき、需要とともに作品の価格も上げていく、という、とても原始的なことを体感しました。なので、“自分の作品を売ること”に気づいたのは偶然です。これは仕事になり得るんじゃないかと。それからアーティスト活動のことを意識し始めました。
―今の時代ならでは、ですね!
そうですね、ペン画やイラストなら、購入する方もとっつきやすいと思いますし。
でも、彫刻作品を作っても全然売れないのに、ペン画はどんどん売れていくので、このままでは彫刻家ではなくイラストレーターになってしまうのではないかと一時的は悩みました。彫刻は、ペン画と比べたら作品の値段も高いですし、彫刻って何?というところから世の中に発信していく必要があったので。ここまでにいろんなことがありましたね。
今はSNSによって誰でもどんどん発信できる世の中ですから、若手も爆発的に増えています。その中から工夫して頭一つ抜けるのは大変ですけれどね。
―日々の地道な取り組みから、アーティストとして活動するきっかけに出会った瀬戸さん。乗り越えてきたご本人ならではのお話でした。
第2回では、子どもの頃のエピソードや、彫刻との出会いについてお聞きします。お楽しみに!
(第2回につづく)
瀬戸さんのペン画作品は公式ホームページでご覧になれます!
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Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。
Writer | naomi
採用PR・企業広報職、Webメディアのディレクターなどを経て、アート&デザインライターに。
作品と同じくらい魅力的な、作家の人となり・ストーリーも伝えたくて書いてます。
好きなもの・興味関心と守備範囲は、古代文明からエモテクのロボットまでボーダーレスです。