Be-dan
2020.12.7
今月のBe-danは、静嘉堂文庫美術館・河野元昭(こうの もとあき)館長にインタビュー!
東京・世田谷区岡本にある静嘉堂文庫美術館は、岩崎彌太郎の弟・岩﨑彌之助(いわさき やのすけ)と、小彌太(こやた)父子が収集した、日本と東洋の貴重な古美術コレクションを展示する美術館です。
第1回は、河野館長の展覧会や作品の楽しみ方について、たっぷりとお聞きしました!
―河野館長が更新されている『饒舌館長のブログ』、楽しく読んでおります。お忙しい中でもさまざまな展覧会に出かけていらっしゃいますね。
そうですね。しかし、さすがにしばらくの間は控えていましたよ。このコロナのせいで、「行きたい」と言っても、家族に心配されて止められてしまいましてね(笑)。でもやっぱり僕は、美術が好きだから、この時期でも江戸美術はよく観るようにしています。
また、館長としてミュゼオロジー(*)の観点から「どうやったらお客様が来るのかな?」と考えながら、なるべく美術館や博物館へ行くようにしています。
*ミュゼオロジー:美術館や博物館の活動、運営や活動についての学問・研究領域のこと。
―現代美術の展覧会や作品もご覧になりますか?
観ますよ。私は秋田県出身で、以前、秋田県立近代美術館の館長を10年間していたこともあり、もちろん興味があります。
秋田県立近代美術館の館長だった時は、『ネオテニー・ジャパン ― 高橋コレクション』展(2009/9/16-11/25に開催)や、『ジパング展 沸騰する日本の現代アート』(2013/9/13-11/10に開催)などを開催しました。
秋田出身のアーティスト・鴻池朋子(こうのいけ ともこ)さんや、県内で活動する村山留里子(むらやま るりこ)さんらをトークイベントにお招きしました。また、私が講演会をやった際は、現代美術と古美術、特に江戸絵画との共通点をテーマにお話ししましたし、ブログにも書きました。
―なるほど。『饒舌館長のブログ』では、「僕の一点」として、展覧会などで見た作品を紹介されていますが、どのように選んでいらっしゃいますか。
自分の好みや関心で選ぶことが多いですよ(笑)。
例えば少し前ですが、アーティゾン美術館でコレクション展を見た時は、ヘンリー・ムーアのストーンヘンジの作品を選びました。(「饒舌館長」1月23日の記事はコチラ)
なぜかというと、ムーアの作品を観て、2003年にイギリスに3ヶ月程滞在した時、朝5時頃にストーンヘンジへ行って、特別にすぐ近くで見学させてもらった感動と思い出がよみがえったからなんです。
―そんなエピソードがあったんですね!
私は高校生の頃、学校の美術クラブに所属して油絵を描いていましたが、自分には向いていないなと感じ、美術史に進みました。
今でも唯一、年賀状だけは絵を描いています。その年はストーンヘンジをモチーフにモノクロで描きました。それで、アーティゾン美術館でヘンリー・ムーアの作品を見て、ちょっと似ているかなぁなんて(笑)。そんな風に自分と関係のあるものを選ぶことがあります。
―とてもユニークな鑑賞の仕方ですね! どうしてもつい解説を読んだり、正解を探してしまったりしがちですが、自由に展覧会や作品を楽しむことが大切、ということでしょうか。
そうですね、自分に引き寄せて観ると、ブログに書きやすいということもあります。また、私の恩師で琳派研究の大家であられた、山根有三(やまね ゆうぞう)先生が仰っていました。
「絵を観る時は、それまで学んだこと、頭に詰まったことは全て忘れて、心をまっさらにして観なさい」と。
もちろん、研究や勉強はしなければならないけれど、作品を観る時はすべて忘れて見るんだ、ということです。山根先生のそのお言葉だけは、守っています。「絵を見るときは、すべてを忘れて見る」とね。
「絵を見るときは、全てを忘れて見る」。
長年、日本美術の研究をされている河野館長がおっしゃるからこその重みがあり、作品鑑賞において大切な心得だと感じました。
第2回では、12月19日(土)からスタートする、「江戸のエナジー 浮世絵と風俗画」展について、河野館長と、企画を担当された学芸員・吉田恵理(よしだ えり)さんに、展覧会の見どころをお聞きしました。
次回もお楽しみに!
(第2回につづく)
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ショップマネージャー兼ディレクター・小川喜之さん
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Editor | 静居 絵里菜
OBIKAKE編集部所属。
Writer | naomi
採用PR・企業広報職、Webメディアのディレクターなどを経て、アート&デザインライターに。
作品と同じくらい魅力的な、作家の人となり・ストーリーも伝えたくて書いてます。
好きなもの・興味関心と守備範囲は、古代文明からエモテクのロボットまでボーダーレスです。