Be-dan

河野館長と吉田学芸員に聞いてみた!
初公開・新発見が続出の『江戸のエナジー 浮世絵と風俗画』の舞台裏(3/4)

2020.12.21

今月のBe-danは、静嘉堂文庫美術館・河野元昭(こうの もとあき)館長にインタビュー!

第3回も、企画を担当された学芸員・吉田恵理(よしだ えり)さんをお招きし、開幕したばかりの『江戸のエナジー 浮世絵と風俗画』で初公開された、貴重な作品や資料について、たっぷりとお聞きしました。

第1回第2回

 

Be-dan 静嘉堂文庫美術館 河野元昭館長 江戸のエナジー展 インタビュー静嘉堂文庫美術館「江戸のエナジー 浮世絵と風俗画」展示風景

 

―本展を企画したきっかけを、教えていただけますか?

 

吉田学芸員:今回の展覧会のそもそもの始まりは、私が約2年前に静嘉堂文庫美術館に着任した際、美術館ではなく、文庫に所蔵している浮世絵版画の調査を行ったことがきっかけでした。実は、約600点が手つかずのまま保管されていまして・・・。

 

―そんなに! すごい量ですね。

 

吉田学芸員:それらを調査していくうちに、所蔵している「四条河原遊楽図屏風」など近世初期風俗画や、菱川師宣(ひしかわ もろのぶ)の「十二ヶ月風俗図巻(じゅうにかげつふうぞくずかん)」などの肉筆浮世絵作品とこの浮世絵版画を、組み合わせて展示ができないかな、と思い始めました。

さらに調査を進めていくと、明治時代の後半にできた審美書院(しんびしょいん)という出版社が、海外向けに出していた『浮世絵派画集』という、非常に豪華な画集に、”男爵・岩﨑彌之助君所蔵”と、岩﨑彌之助(いわさき やのすけ)が所蔵していた肉筆の浮世絵が、10件も掲載されていたことが新たに分かりました。

 

河野館長:これは吉田さんの大発見でしたよ。今となっては、この画集自体がアートだと思いますね。

 

Be-dan 静嘉堂文庫美術館 河野元昭館長 江戸のエナジー展 インタビュー
左:河野元昭館長

右:「江戸のエナジー 浮世絵と風俗画」担当学芸員・吉田恵理さん

 

―画集がアートになるって、すてきですね。

 

吉田学芸員:そうですね。館長のおっしゃるとおり、『浮世絵派画集』は日英博覧会で、世界に日本の木版技術をアピールするために作られたようなものでした。ですから、非常に贅沢に作ってあります。

英語版もありますが、残念ながら静嘉堂では所蔵していません。でも、日本語版は今回の展覧会で初めて公開します。会期中は通期で展示予定です。

 

Be-dan 静嘉堂文庫美術館 河野元昭館長 江戸のエナジー展 インタビュー『浮世絵派画集』特別上装限定百部のうち第41号
五冊 審美書院 明治39-41年(1906-08)

 

画集に載っていた肉筆浮世絵10点は、これまで展示されることはなかったですが、本展では、こちらも合わせて展示します。出品全69点中、50点が新発見、新出の作品です。ぜひお楽しみください。

 

―お話を聞いているだけでも本当に豪華な展覧会ですね! 長い美術館の歴史の中で、初公開の浮世絵作品が多いというのは、何か理由があるのでしょうか。

 

吉田学芸員:おそらくコレクションをしていた当時は、いわゆる“庶民の芸術”だった浮世絵よりも、中国絵画や雪舟の作品など室町時代の水墨画のほうが、値段も高く、コレクションとして誇らしいものだったのでは、と想像します。

岩﨑が集めた静嘉堂のコレクションは、❝大名道具への憧れ❞があったはずです。刀から始まって、伊達家に伝来した茶道具一式をまとめて購入していますからね。中には足利将軍家に伝わってきた文物(*)もあります。

 

*文物(ぶんぶつ):文化の産物。学問や芸術など文化に関するもののこと。

 

河野館長:浮世絵の展覧会は、2018年に「歌川国貞展」を行って以来です。

一時は新型コロナウイルスの関係で、このままキャンセルか・・・と思っていましたが、皆さんの期待度が高くて、やっぱり復活しよう、と決めました。

ぜひ多くの方に楽しんでいただきたいです。

 

Be-dan 静嘉堂文庫美術館 河野元昭館長 江戸のエナジー展 インタビュー静嘉堂文庫美術館「江戸のエナジー 浮世絵と風俗画」展示風景

 

information

展覧会名:江戸のエナジー 風俗画と浮世絵

館名:静嘉堂文庫美術館

会期:2020.12.19〜2021.02.07

開館時間:10:00-16:30

休館日:月曜日(ただし、1/11は開館)、1/12
年末年始(12/28~1/4)

料金:一般1,000円、大高生700円、中学生以下無料

展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/6665/

公式サイト:http://www.seikado.or.jp/

 

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〆切は1月6日23:59まで!

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Editor | 静居 絵里菜

OBIKAKE編集部所属。

 

Writer | naomi

採用PR・企業広報職、Webメディアのディレクターなどを経て、アート&デザインライターに。
作品と同じくらい魅力的な、作家の人となり・ストーリーも伝えたくて書いてます。
好きなもの・興味関心と守備範囲は、古代文明からエモテクのロボットまでボーダーレスです。

note  https://note.com/naomin_0506

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