Be-dan
2021.2.22
今月のBe-danは、株式会社虎屋で、ギャラリー運営や虎屋文庫を支えるお二人にインタビュー!
お菓子にまつわる資料を収集・管理し、和菓子文化の研究、情報発信も行う虎屋文庫。
最終回では、河上 可央理さんに、虎屋文庫が守り伝え続けていることについてお聞きしました!
(左)小谷 由香里さん(右)河上 可央理さん
※撮影のため、一時的にマスクを外してもらいました。
―公式ホームページ内の「和菓子だより」をいつも楽しく拝見しています。こちらは、虎屋文庫の方々が交代で執筆されているのでしょうか?
はい、順番に執筆しています。その時期販売しているお菓子に関連させて豆知識的なコラムを書いたり、虎屋文庫が所蔵する資料を紹介したり。他機関の菓子関連展示の情報をご案内することもあります。
「和菓子だより」とは別に、「歴史上の人物と和菓子」というコラムも連載していますが、こちらは取り上げる題材選びから執筆まで、各人に任されていますので、少し大変です(笑)。
菓子資料室 虎屋文庫 公式サイト(外部リンク)
―それは大変そうです!河上さんは、題材をどのように探していますか?
作家の日記や随筆などを地道にめくり、「お菓子が出てこないかな」と探しています。また、浮世絵の展覧会などが開催されると「お菓子が描かれている作品があるかもしれない」と足を運ぶこともあります。
歌川広重や三代歌川豊国の作品などにも、お菓子が目立つように描かれているものがあるんですよ。あとは、茶道をたしなんでいる者は、茶会記(*)をあたるなど、スタッフによって探し方はさまざまですね。
*茶会記(ちゃかいき):茶会が行われた日時や場所、使われた道具についてや、食事(懐石膳)の献立、参加者の名前などを記したもの。
実は「歴史上の人物と和菓子」は2000年から続けている古株のシリーズで、2017年にはこの連載をもとにした書籍『和菓子を愛した人たち』も発行し、 読んだ方から感想や講演依頼をいただくことも増えました。
―文章にまとめていく際の編集方針や、気を付けているのはどんなことですか?
自分が面白いと思った点がどこなのか、わかりやすく書くことです。例えば、“作家の日記に○○という菓子が出てきます、こういう文章が書いてあります”という情報を書き連ねるだけでは、読み手もどう受け取っていいかわからないと思います。なので、なるべく他の資料も引き合いに出して、日記には書かれていない色かたちを示したり、味を想像してもらえるようにしたり、資料から菓子の実体に迫るおもしろさを感じていただけるように気を付けています。
―河上さんが虎屋文庫のお仕事に携わってきた中で、特に大切にしていることや、やりがいを感じる瞬間はどんなときでしょうか。
前回の話と重なるところもありますが、この仕事はやはり“虎屋文庫でしかできないこと”だと思います。これまで虎屋文庫に携わってきたスタッフが残してくれた資料のおかげで、今の仕事ができていると感じる機会が多くあります。自分も後世の人のために、今の時代の資料をきちんと分かる形で残さないといけないと考えています。
―今もまさに、虎屋の歴史が積み重なっているのですね!それでは最後に、河上さんが好きな虎屋のお菓子を教えてください。
はい。とても迷ったのですが、やはり羊羹(ようかん)です。特に、小倉羊羹「夜の梅」ですね。入社直後は、とても甘く感じていましたが、今では何本でも食べられます(笑)。
羊羹をあまり召し上がったことのない方には、ぜひ一度お試しいただきたいです。
日本文化を象徴する存在・和菓子。普段あまり身近ではなく、なかなか手に取ることのない方も多いかもしれません。
今回のご紹介を機に、とらや 赤坂店やお近くの百貨店などで、和菓子にふれてみてはいかがでしょうか?
次回のBe-danもお楽しみに!
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2020.09.26~2021.04.11
開催終了
虎屋 赤坂ギャラリー
Editor | 静居 絵里菜
OBIKAKE編集部所属。
Writer | naomi
採用PR・企業広報職、Webメディアのディレクターなどを経て、アート&デザインライターに。
作品と同じくらい魅力的な、作家の人となり・ストーリーも伝えたくて書いてます。
好きなもの・興味関心と守備範囲は、古代文明からエモテクのロボットまでボーダーレスです。