Be-dan
2019.7.15
【第3回:今後の活動内容や、挑戦していきたいことを教えてください。 】
27歳の時、突如としてイタリア留学を決めて、そこから美術史の面白さにハマっていった杉全美帆子さん。その後、さらに劇的な展開が続きます。
―ボローニャのアカデミアを卒業された後はどうされたんですか?
いえ、実はボローニャでは卒業しなかったんです。ボローニャの2年間で語学力や美術史の基礎知識が身に着いたら、その目で再びフィレンツェのルネサンス美術が見たくなってしまって。
イタリアではアカデミア間の転校はわりと自由なので、それでフィレンツェのアカデミアに移りました。そこでさらに2年間在籍している間に、フィレンツェの名所旧跡や美術館を全部回りました。久々のフィレンツェは最初イタリアに来たときとは全然違って見えましたね。
結局ビエンニョという大学院に相当するコースも含めて全部で7年間イタリアに滞在することになりました。
―7年間もいらっしゃったんですね。お金とか大変じゃないですか?
本当にたくさん周りの方に助けてもらいました。そしてできるだけ節約しました!日本との往復航空券や生活費はもちろんかかるんですが、イタリアのアカデミアって学費がすごく安いんです。私の頃は年間の学費の自己負担額は7万円程度だったようなイメージです。
―安い!
日本の美大と比べたらほとんどタダみたいな感じですよね。
条件が合えば奨学金までもらえるんです。私はもらえたのでこの料金でした。
また学食が素晴らしいんです!めちゃくちゃ美味しくてボリュームも満点、本場のイタリア料理が昼、夜とおなか一杯食べられるんです。だから、昼と夜しっかり食べる代わりに朝食を抜くなど節約していました。
またアカデミアの学生は美術館も無料だったので、今度こそ何度も美術館や教会に通いました。
―学びには最高の環境なんですね。
その時の経験を元に書いた本がこの『イラストで読む ルネサンスの巨匠たち』なんです。
―この本はいつ書かれたんですか?
フィレンツェのアカデミアのビエンニョに籍を置きながらフィレンツェで書きました。でも最初は文章がメインで、イラストは補足程度の構成だったんです。半分くらい書けたところで、一時帰国する機会があり、父の知り合いの編集者のさらに知り合いの編集者を紹介してもらいました。その編集者さんと一緒に突撃提案しに行ったのが河出書房新社なんです。
原画
そこでその原稿を見せて、フィレンツェでの話などを説明したら、今の担当編集の竹下純子さんが「ぜひやりましょう、ただし全ページイラストで!」って言ってくださり、出版が決まりました。全ページイラスト、という過激な注文に最初はかなりひるみましたが、ここはもうやるしかないと頑張りました。この竹下さんとの出会いも、私の人生の中の大きな幸運の一つでした。
―『イラストで読む美術』はシリーズ化されていますよね。1冊書き上げるのにどれくらいかかるんですか?
そうですね。2010年から書き始めて、9年間で6冊出版することができましたので、平均すると1冊約1年半くらいですね。構成や調査、執筆、イラスト、基礎のレイアウトデザインなど制作のほぼすべてを自分一人でやるのでなかなかな作業量なんです。その間に結婚して子供が二人生まれたり、家族の病気などで中断してしまったこともありましたし、最近は小学校関連の活動が大変です。でも、おかげさまでなんとかここまでやってこられました。
イラストで読む 美術シリーズ全6冊
―今は仕事に家庭に非常に充実されているのですね!ところで、今後挑戦していきたいことなどはありますか?
遠い将来のことはあまり頭にはないのですが、今回「旧約聖書」編を出せたので、まずは「新約聖書」編だけは刊行しなくては、と思っています。また講演会などもやりたいな、と思っています。実はこの間、初めてトークショーをやらせていただき(参考:http://blog.imalive7799.com/entry/Sugimata-Tak-201903)感じたのですが、しゃべるのがかなり好きみたいです(笑)。執筆作業中は、読者の皆様にお伝えしたい面白いことにたくさん出会うのですが、どうしても本だと伝えられることって限界がありますよね。だからその分トークでもっともっとぶっちゃけた美術史の面白さを皆さんにお伝えできるチャンスができたらいいなと思っています。
次作にもすでに着手されるなど、今後の活躍も楽しみな個性派の作家・杉全美帆子さん。次回、いよいよ最終回では、オススメの美術館や、杉全さんならではの美術館に対する思いをお聞きします!来週もお楽しみに!
(第4回に続く)
杉全 美帆子(すぎまた みほこ)
作家・イラストレーター
女子美術大学、イタリアのアカデミア・ディ・
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 松栄 美海
OBIKAKE編集部。学生時代は美大で彫刻を学ぶ。IT企業を経て昨年9月よりWEB担当として入社。
OBIKAKEの立ち上げを担当。編集や撮影について日々勉強中。