Be-dan
2021.2.15
今月のBe-danは、株式会社虎屋で、ギャラリー運営や虎屋文庫を支えるお二人にインタビュー!
第2回までは、虎屋 赤坂ギャラリーの展示企画などを担当している小谷 由香里さんに、お話をお聞きしました。
第3回からは、お菓子にまつわる資料を収集・管理し、和菓子文化の研究、情報発信も行う「虎屋文庫」の河上 可央理さんにお話をたっぷりお伺いします!
(左)小谷 由香里さん(右)河上 可央理さん
※撮影のため、一時的にマスクを外してもらいました。
―現在は「虎屋文庫」という名称で知られていますが、1973年以前は「資料室」と呼ばれていたそうですね。
はい。旧本社ビル(現在の赤坂店の前身)に、ギャラリーと書庫のある新館が完成したことがきっかけで、資料室から「虎屋文庫」と名前を改めました。そして対外向けの活動として、展示をするようになりました。
これらは当時の社長(16代)の意向でした。16代は大学で美術史を専攻し、美術に関する仕事を経て家業を継いでいますので、美術や文化に対する強い想いがあったのです。
また、1994年には、和菓子関連の研究論文や史料翻刻を中心とした学術雑誌である機関誌『和菓子』の発行(年1回)も始め、2021年3月発行のもので28号になります。
機関誌『和菓子』一覧ページ(外部リンク)
―虎屋文庫の方々は、皆さん学芸員の資格をお持ちなのでしょうか?
大学時代に取得していた者もいますが、私も含め持っていない者も数名おります。虎屋文庫は営業・製造などと同じく、社内の一部署ですので、配属されてから業務を通じて資料の扱い方を学んだり、外部の研修に参加したりと、日々勉強しています。
―では河上さんも、新卒で入社された時は売場で販売を?
はい。最初の2年は店舗で販売をしていました。売場にいるとお菓子のことがよく分かりますし、お客様の声を直接伺えたことはとても良かったです。
店頭ではお客様から、会社の歴史や、なぜ虎屋という社名なのか、といった質問もよくいただきました。お客様からいただいたご質問に答えるのが、虎屋文庫の大切な仕事の一つでもあります。
当時は私も虎屋文庫へ連絡し、その回答をお客様にお伝えしていました。
―そうだったのですね。「虎屋」の社名の由来、とても気になります。教えていただけますか?
諸説ありますが、店主の黒川家が代々毘沙門天を信仰しており、毘沙門様とゆかりのある動物がトラであることや、トラは日本に生息せず、古い時代は霊獣のように考えられていて、その力にあやかろうとしたためとも言われています。
―会社やお菓子の歴史などたくさんのお問い合わせがあるかと思います。だいたい月にどれくらいの件数のお問い合わせがありますか。
平均約100件ほどです。例えば柏餅の由来など、季節のお菓子にまつわる質問や、虎屋の代表商品であるようかんはいつから作っているのか?など、身近な疑問からくるような質問が多いです。
―老舗の和菓子のお店はたくさんありますが、虎屋文庫のように、和菓子の研究機関でもあり対外的な活動も行っているところは、珍しいですね。
はい。菓子専門にこれだけ資料が集まっていて、調査の蓄積があるのは、大きな強みだと思っています。なので、いただいたご質問には必ず資料にもとづいてお答えするようにしています。
資料があまり残っていない古い時代のお菓子について聞かれることも多く、”残っている資料の範囲では、おそらくこうだと思われます”といったご説明しかできないこともあります。言い切れない難しさもありますが、いい加減なお返事はできませんから。
―責任重大ですね。ちなみに、どのくらい古い時代の資料が残っているのですか?
虎屋に関しては約1,100点の古資料があり、一番古いもので寛永5(1628)年に、今の虎屋菓寮 京都一条店の土地を買い増したときの記録が残っています。また江戸時代、お菓子をお届けするときに使っていた「井籠(せいろう)」と呼ばれる容器などの古器物200点ほどや、虎屋関係以外では江戸時代の菓子製法書をはじめとする古典籍、菓子が描かれた錦絵などを所蔵しています。それらは主に書庫内で保管しています。
伝元禄11年(1698) 竹虎青貝井籠
非常にデリケートで管理が難しい資料の数々を所蔵する虎屋文庫について、貴重なお話が伺えました!
第4回は、河上さんが思う、虎屋文庫が守り伝え続けているものについてたっぷりとお聞きしていきます。次回もお楽しみに!
(第4回につづく)
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開催終了
虎屋 赤坂ギャラリー
Editor | 静居 絵里菜
OBIKAKE編集部所属。
Writer | naomi
採用PR・企業広報職、Webメディアのディレクターなどを経て、アート&デザインライターに。
作品と同じくらい魅力的な、作家の人となり・ストーリーも伝えたくて書いてます。
好きなもの・興味関心と守備範囲は、古代文明からエモテクのロボットまでボーダーレスです。