Be-dan

美術館は「大人の遊び場」(1/4)

2019.4.2

「おびかけ」ではアートシーンを応援する人にお話を伺うインタビューリレー「Be-dan」を月替わりで連載します。

 

記念すべき第1弾は、アートディレクターで荻窪のブックカフェ「6次元」店主でもあるナカムラクニオさん

 

山形ビエンナーレのキュレーターや美術館での解説トークなど、アートの面白さをわかりやすく伝えるプロフェッショナルとして活躍中です。15歳でアートの面白さに目覚め、17歳の時には画家として個展も開催。以来30年間毎日のように美術館通いを楽しんでいるというナカムラさんは異色の経歴の持ち主です。学生時代は美術館でアルバイトをしながら、美術書の輸入販売をし、大学卒業後、テレビ番組のディレクターに。美術番組の演出を手がけた後、37歳の時に独立。NHK WORLDで日本の文化を海外に発信する番組を担当しながら、陶磁器の伝統的修理技法「金継ぎ」の講座を開催。芸術祭のキュレーター、美術に関する書籍の執筆活動を続けています。

 

アートや本好きの人にとって「聖地」のような素敵な雰囲気のブックカフェ「6次元」で、たっぷりとナカムラさんの話を伺ってきました。

 

 

第1回:あなたにとって美術館とはどういう場所ですか?

 

 

 

—本日はよろしくお願いします。それでは、早速お伺いしたいと思います。

ナカムラさんにとって美術館とはどういう存在でしょうか?

 

 

 

美術館は「大人の遊び場」だと思っています。

作品を楽しむだけでなくデートもできるし、グッズを買ってもいい。カフェやレストランでゆっくりしてもいいですよね。

 

15歳の頃は「月刊ギャラリー」という展覧会の情報誌にレビューを投稿し、美術展の招待券をもらって毎日のように美術館に通っていました。特に、1987年に東京都美術館で開催されたジョナサン・ボロフスキー展が衝撃的でした。美術館の天井に穴が空いていたり、卓球台が置いてあって美術館の中で遊べたり。それ以来、美術館通いがはじまりました。

 

大学生になると、外国の美術館にも頻繁に行くようになり、日本で売っていない美術書を買うために、フランスやアメリカまで行きました。20歳の頃は、かなりの頻度で海外の美術館やギャラリーに通っていました。それで美術書を表参道の交差点で売っていたら美術館のアルバイトにスカウトされ、西麻布に出来た「ペンローズ・インスティテュート(PICA)」で作品の解説をしていました。

 

なので「美術館は、学校で、遊び場で、隠れ家でもある」という感じです。最近は、多くても週3回位ですが、約30年間ずっと美術館に通い続けています。

 

 

 

—30年間ずっとですか!凄いですよね。美術館では、じっくり作品をご覧になるのですか?

 

 

 

今は時間をかけて観ることは少ないですね。長い時で2時間くらい。短い時は30分くらいの日もあります。出来るだけ多くの展覧会を観たいので、ギャラリーとあわせて1日に何軒もハシゴしながら楽しんでいます。多い日は5〜6カ所まわる日もあります。

東京だと、東京都庭園美術館、世田谷美術館、出光美術館、三菱一号館美術館、日本民藝館、東京国立近代美術館、東京都現代美術館が特に好きです。関西だと、京都国立博物館、国立民族学博物館、アサヒビール大山崎山荘美術館、奈良国立博物館によく行きますね。美術館の建築や独特の雰囲気がたまらなく好きです。美術館の「エキスを吸いに」定期的に出かけているという感じです。あと、美術館の図書室にもよく行きますね。

 

 

 

—最近は凝ったグッズが販売されていたり、おしゃれなカフェができたりと、美術館も随分変わってきていますよね。ナカムラさんご自身は、最近の美術館についてどう感じていらっしゃいますか?

 

 

 

美術展のオリジナルグッズやカフェの特別メニューが充実して、楽しめる要素が増えましたね。

ムンクの「叫び」とスナック菓子「カラムーチョ」がコラボしたり、フェルメールの「牛乳を注ぐ女」のスープが飲めたり、「牛乳を注ぐミッフィー」が販売されたり。運慶展の仏像ガチャとかもおもしろいですよね。山種美術館では、毎回展覧会の作品とコラボしたオリジナル和菓子が楽しめてオススメです。

 

ちなみに一番好きなショップは、国立新美術館の「SOUVENIR FROM TOKYO(スーベニアフロムトーキョー)」です。行くと必ず立ち寄っています。昔は、退屈で入りにくい美術館が多かったですが、最近は公式TwitterやInstagramなどSNSで面白い投稿がされていたりして、美術に興味がなかった人にも楽しめるようになってきましたね。敷居を下げて【下から目線】でお客さんをもてなそうとする美術館が増えてきています。初心者でも入りやすくなったのは、本当に素晴らしいことだと思いますね。

 

 

 

 

第2回へ続く

 

ナカムラクニオ

1971年東京生まれ。アートディレクター、山形ビエンナーレキュレーター、荻窪「6次元」店主。著書に『人が集まる「つなぎ場」のつくり方――都市型茶室「6次元」の発想とは』『さんぽで感じる村上春樹』『パラレルキャリア』『金継ぎ手帖』『猫思考』『村上春樹語辞典』『はじめての金継ぎBOOK』など。「こじらせ美術館」連載中。

 

★他のインタビュー記事を読む

作詞家・ライター・コーディネーター・キュレーター・ディレクター 新 麻記子さん

第1回第2回第3回第4回

株式会社Eastの代表取締役・開 永一郎さん

第1回第2回第3回第4回

 

その他の記事はコチラ

ナカムラクニオさんをフォローする

Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)

Editor | 松栄 美海
OBIKAKE編集部。学生時代は美大で彫刻を学ぶ。IT企業を経て昨年9月よりWEB担当として入社。
OBIKAKEの立ち上げを担当。編集や撮影について日々勉強中。

この記事をシェアする
一覧に戻る
TOP