Be-dan
2019.8.5
Be-dan specialでは、4週にわたってミューザ川崎シンフォニーホールの広報・前田明子さんにシェーンベルク「グレの歌」の魅力を伺っていきます。
インタビュー第2回では、「グレの歌」の作者であるシェーンベルクの多彩な才能や表現についてお聞きしました。
第3回では、約400名の大編成による公演での演奏を担当する「東京交響楽団」のアーティスト達について掘り下げてお聞きしていきます!
―今回の「グレの歌」の指揮者は、東京交響楽団の音楽監督を務めるジョナサン・ノットさんですよね。それにしても400名の大編成をまとめあげるのは並大抵ではないですよね?
そうですね。それだけ人数が多いと、指揮者もオーケストラと声楽パートがきちんと聞こえるようにバランスを取るのがとても難しくなります。
ですが、ジョナサン・ノットさんなら大丈夫です! ノットさんは、本場のドイツ名門歌劇場でオペラを長く学ばれた、今世界で最も注目されている指揮者の1人なので、当日は凄く良い演奏になるんじゃないかと今から期待しています。
―ノットさんは、ミューザ川崎シンフォニーホールを本拠地としている東京交響楽団とかなり先まで長く音楽監督を務められる予定ですよね。
そうなんです。なんと2026年まで任期延長が決まり、2026年まで音楽監督を務められます。ノットさんは今50代と、指揮者としてまさに一番の充実期を迎えている方なのですが、2014年度からノットさんが東京交響楽団の音楽監督に就任しました。就任以来、オーケストラとの相性もぴったりで、東京交響楽団のことをとても気に入ってくれているんです。
―指揮者とオーケストラがお互い気心が知れた良い関係なら、演奏も安心ですね!
そうなんです。長期間の契約のもと、じっくり腰を据えて大作に取り組まれているんです。特にここ数年は、ノットさんが得意とするオペラをやりたいということで、まず3年かけて「コジ・ファン・トゥッテ」「ドン・ジョバンニ」「フィガロの結婚」と、演奏会形式の「モーツァルト・オペラ3部作」を手掛けられました。
その経験を経て、ホールの開館15周年を記念するにふさわしい、声楽つきの大曲を、ということになって挑戦することになったのが、「グレの歌」だったんです。
「グレの歌」世界初演時のポスター
指揮:フランツ・シュレーカー
1913年(ウィーン楽友協会大ホール)
―その大編成ゆえに、滅多に演奏されないときいています。
今回は13年ぶりと久しぶりの演奏で、しかもまだ8回目だとか。
そうなんです。ところで、全部のパート譜が描いてあるオーケストラのスコアってご覧になったことがありますか?
これが、「グレの歌」のために特注された五線譜なのですが、全部で48段もあるんです! 普通はこんなに段数ないじゃないですか(笑)。写真を見ていただくとわかりますが、普通のサイズよりもずいぶん大きいですよね。
フランツ・シュレーカーが世界初演時(1913年)に使用した指揮スコア
―これだけでも演奏のスケール感が伝わってきますね!
これを一つひとつ全部人間が演奏しているところが素晴らしいですよね。シンセサイザーで音を重ねるのとはわけが違いますから。
東京交響楽団は、ハイレベルなプロフェッショナル集団です。彼ら一人ひとりが独立したパートを弾いて、それらが全て有機的にまとまりあって一つの完成した音楽として聴けるのが、オーケストラ公演の醍醐味だと思うんです。
作曲家の頭の中ってどうなっているんだろう? と思いますし、それをまとめあげて、アンサンブルする指揮者の才能も凄まじいですよね。
―今回は合唱パートも多数用意されていますが、合唱団の方々はどうやって選出しているんですか?
東響コーラスという、限りなくプロに近いアマチュアの方々にお願いしています。厳密なオーディションを行って、舞台に立つメンバーが選ばれています。
川崎市は洗足学園と昭和音大と音楽大学が2つあって、市民合唱団は100以上もある、日本有数のハイレベルな「音楽都市」なんです! だから、合唱団もとても層が厚いんですよ。東響コーラスはレコーディングを何回もやっていますし、皆さんプロと遜色のない実力の持ち主ばかりです。日本語だけでなく様々な言語の曲も、基本的には全員暗譜して臨まれますし、本当に信頼できるコーラスなんです!
ジョナサン・ノットさん率いる東京交響楽団に、ぜひご期待くださいね!
(第4回へ続く)
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ミューザ川崎シンフォニーホール
開館15周年記念公演
シェーンベルク「グレの歌」
※日本語字幕あり
2019年10月5日(土)15:00開演
2019年10月6日(日)15:00開演
(各14:15開場/途中休憩1回/17:15終演予定)
主催:川崎市、ミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市文化財団グループ)
共催:公益財団法人 東京交響楽団
後援:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム
With kind support of the Arnold Schoenberg Center, Vienna
グレの歌公式ホームページ
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/gurre/
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。のんびりやってます。