Be-dan
2019.4.8
第2回:アートを楽しむ切り口を教えてください。
15歳の頃から美術館に通い、仕事でも美術番組の演出、金継ぎ、古美術の研究を通じて様々なアートと関わってきたナカムラクニオさん。インタビュー第2回では、ナカムラさんにとっておきの「アートを楽しむ切り口」について伺いました。
—ずばり、初心者の人でも楽しめる、アートの楽しみ方を教えてください!
美術館でマジメに作品を鑑賞するだけがアートの楽しみ方ではありません。空間を楽しんだり、庭園を散歩したり、いろいろな経験ができるところですよね。関連書籍や美術作品を実際に買って、そばに置いておくのが何よりオススメです。実際に手に入れると作品に親近感を感じて、アートがぐっと身近なものになりますよ。作品がどうしても無理なら版画でもいいし、画集だけでもいいと思います。
—えっ、作品を買ったりするのって、結構高かったりするんじゃないですか?
そんなことはないですよ。ピンからキリまでありますから。
例えば、縄文土器の欠片なら1000円位で買えます。古伊万里、青磁、李朝の白磁だって探せば数千円から買うことも出来ます。平安時代の山茶碗でも5000円くらいからありますよ。江戸時代の浮世絵や千代紙なども安く手に入ります。リトグラフとかシルクスクリーンもオススメです。日本の画家の版画なら有名作家でも1万円くらいから買えます。学生の時、初めて買ったミロのリトグラフは、サインがないカタログレゾネに入っている作品だったので1万円でした。ポップアートの巨匠ジム・ダインのリト刷りポスターも1万円くらいで買いました。社会人になって初任給で買った美術品は、岡田謙三の水彩画で3万円でした。武者小路実篤の書画も2万円くらい、大好きな須田剋太の書も10万円くらいで買えます。仏像なんかもオススメです。昨年は、古い不動明王象を手に入れましたが、それ以来、仏像を見る目が変わってきたと思います。
とにかく一度でもささやかな美術品を買って愛でるのが一番の鑑賞法だと思います。日常生活の中に置いてみると、美術がぐっと身近なものに感じられますよ。今は、美術館に行っても縄文土器がすごく気になってしまいます。自分の持っているものとどこがどう違うのかな、なんて思いながら鑑賞しています。
—なるほど、、、!他にオススメの鑑賞法はありますか?
美術の本は、とりあえず買って、読まずに積んでおくだけでもいいんですよ。「積読(つんどく)」読書法と呼んでいます。目立つところに1軍、2軍と仕分けしておきます。すると生活の中で表紙が無意識に入ってきますよね。そういうふうに自分の中に美術が溶け込んでいくだけでいいんです。
—おおお!すぐにでも実践したいです!では、他にもやってみたい美術イベントなどはありますか?
これからは、もっと多くの人が美術館に気軽に通えるようになればいいなと思っています。美術館の解説トークや講座などは、できるだけ仕事を引き受けるようにしています。元美大出身者とか、いろいろな事情でアーティストにならずに就職の道を選んだ人にも、「美術の鑑賞者として」戻ってきてほしいですよね。そういった人たちって、一度離れてもやっぱり美術には人一倍興味がありますから。でも美術の道を離れちゃうと、子育てや仕事などでしばらくはなかなか美術館に行く時間が取れないんですよね。これまでも「伊藤若冲鑑賞会」とか「ルーシー・リー鑑賞会」など実物に触れる講座を何度も開催していますが、もっと増やしていきたいですね。まったく新しい体感型美術鑑賞イベントを手がけてみたいです。
(第3回へ続く)
ナカムラクニオ
1971年東京生まれ。アートディレクター、山形ビエンナーレキュレーター、荻窪「6次元」店主。著書に『人が集まる「つなぎ場」のつくり方――都市型茶室「6次元」の発想とは』『さんぽで感じる村上春樹』『パラレルキャリア』『金継ぎ手帖』『猫思考』『村上春樹語辞典』『はじめての金継ぎBOOK』など。「こじらせ美術館」連載中。
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Writer | 齋藤 久嗣
脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。
首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive)
Editor | 松栄 美海
OBIKAKE編集部。学生時代は美大で彫刻を学ぶ。IT企業を経て昨年9月よりWEB担当として入社。
OBIKAKEの立ち上げを担当。編集や撮影について日々勉強中。